11.4 仮説検定と Stein の補題

手元に長さの系列が一つある.それが分布から出たのか,分布から出たのかを当てたい.二つの分布はどちらも分かっていて,分からないのはどちらが真かだけである.この形の問題を 仮説検定 と呼ぶ.二つの候補のうち,はじめは正しいものとして置き,捨てるには証拠が要るとみなす側を 帰無仮説,もう一方を 対立仮説 と呼ぶ.どちらを帰無仮説にとるかで二つの分布の扱いは非対称になり,本節はの側を帰無仮説にとる.前節までの道具はそのまま使える.系列を見て決めるとはを二つに分けることであり,どちらの誤りも分けた片方の確率をで測ったものだから,分ける側を型類の合併にとれば前節までの評価がそのまま効く.

答え方を決めると,間違え方は二通り出る.真がなのにと答える誤りと,真がなのにと答える誤りである.が全点で正であるかぎりどちらもにはできない(例 11.4.2)ので,一方を一定の水準に抑えたうえで他方を最小にする,という形に問題を立て直す.抑えるほうを固定すると,が違う分布であるかぎり,最小にしたほうはとともに指数で落ちる.その指数を下からで押さえるのが Stein の補題(Chernoff–Stein の補題とも呼ぶ)の達成可能性で,上から押さえるのがその逆である.本節はこの二つを示す.

相対エントロピーの三つめの読み方がここで出る.1.6 節では「だと思い込んで符号化したために余計に払う符号長」,前節では「から見て型の系列が出にくい度合い」だった.本節では「を見分ける難しさ」になる.が大きいほど二つは見分けやすく,第二種の誤りは速く落ちる.本節の主張がその速さを測る.

本章の残る三つの節は,一本の曲線の三つの場所を測る.第一種の誤りの落ちる速さを横軸に,第二種の誤りの落ちる速さを縦軸にとると,横軸がの端,すなわち第一種の誤りに指数での減り方を求めない端の高さが,本節で測る指数と同じ値になる.二つの速さが等しくなる点に現れるのが 11.5 節の Chernoff 情報であり,曲線の全体が 11.6 節の誤りの指数のトレードオフ関数である.この絵は 例 11.6.10 で数値になって戻ってくる.

検定と 2 種類の誤り

定義 11.4.1(検定と 2 種類の誤り). を空でない有限アルファベット,𝑃上の分布,𝑃𝑛をそれぞれの重の積分布とし,とする.部分集合を一つ決め,系列に属するときにを,属さないときにを答えることにする.この受容域,答え方そのものを 検定 と呼ぶ.検定の 第一種の誤り第二種の誤り

𝛼𝑛(A𝑛):=𝑃𝑛(Ac𝑛),𝛽𝑛(A𝑛):=𝑄𝑛(A𝑛)

で定める(Ac𝑛 :=X𝑛 A𝑛).

第一種の誤りは,真の分布がであるのにと答えてしまう確率であり,第二種の誤りは,真の分布がであるのにと答えてしまう確率である.受容域を広げればと答えやすくなるので,第一種の誤りは大きくならず,第二種の誤りは小さくならない.二つはこの向きに引き合う.記号は仮説検定の標準的な書き方で,第3章 3.1 節が二状態のマルコフ情報源の遷移確率に使ったものと字が重なるが,あちらはつねに裸で現れ,本章のものはつねに長さの添字と受容域の引数をとるので見分けられる.

形式化上の注記. 定義 11.4.1 が定める受容域・検定・2 種類の誤りに対応する単独の宣言は無い.第一種の誤りを水準以下に抑えるという条件と第二種の誤りの値は,どちらも steinBetaSet (InformationTheory/Shannon/Stein/OptimalExponent.lean) の要素を定める条件の中に現れる.

例 11.4.2(極端な二つの検定). を空でない有限アルファベット,𝑃上の分布,とし,𝛼𝑛定義 11.4.1 のとおりとすると,次の三つが成り立つ.

  1. ととるとである.
  2. ととるとである.
  3. が全点で正ならば,かつとなるは無い.

証明.

  1. ならだからであり,である.

  2. ならだからであり,である.

  3. が全点で正であるとする.このときどのでもである.したがってとなるのはのとき,すなわちのときに限る.そのとき第の主張よりであってではない.

の主張は,が全点で正であるかぎり,どちらの誤りもにする検定が無いことを言っている.そこで一方を一定の水準に抑え,もう一方をできるだけ小さくする.抑えるほうを第一種の誤りにとるのが仮説検定の作法であり,の扱いはこの時点で非対称になる.帰無仮説と対立仮説という名前の違いも,この非対称に対応している.

定義 11.4.3(水準の最良の第二種の誤り). を空でない有限アルファベット,𝑃上の分布,𝑛 1とし,𝛼𝑛定義 11.4.1 のとおりとする.第一種の誤りを以下に抑える受容域すべてにわたる第二種の誤りの下限を

𝛽𝑛(𝜀):=inf{𝛽𝑛(A𝑛):A𝑛X𝑛, 𝛼𝑛(A𝑛)𝜀}

と書き,水準の最良の第二種の誤り と呼ぶ.

下限をとる集合は空ではない.例 11.4.2 の第の主張よりはどのでも条件を満たすからである.水準を大きくとるほど条件を満たす受容域は増えるので,は大きくならない.以下では水準を固定したままを大きくして,この値がどれだけ速く小さくなるかを測る.

形式化: 達成できる第二種の誤りの集合 steinBetaSet,その下限 steinOptimalBeta (ソース)

達成可能性

まず下から,すなわちにいくらでも近いところまで押し上げる検定があることを示す.受容域は型の方法で作る.長さの型ごとに,で平均した対数尤度比を計算し,それがに近い型の型類だけを集める.型類の中では確率が一定である(命題 11.1.4)ので,この一つの数だけで型類全体のの比が決まり,第二種の誤りがそのまま抑えられる.第一種の誤りのほうは,型が真の分布に近い系列の確率がに近づくこと,すなわち 第2章 定理 2.4.3 から出る.

定理 11.4.4(Stein の補題の達成可能性). を空でない有限アルファベット,𝑃上の全点で正の分布,𝜀 (0,1)とし,定義 11.4.3 のとおりとする.このとき,どのでもであり,十分大きいすべてのについて

1𝑛log𝛽𝑛(𝜀)𝐷(𝑃𝑄)𝛿

である(1.6 節の相対エントロピー).

証明. まずが正であることを見る.を満たす受容域をとると,よりだからは空でなく,が全点で正だからである.の部分集合は有限個しかないので,定義 11.4.3 の下限は有限個の正の数の最小値であり,正である.

次に受容域を作る.は全点で正だから,どの文字でもは有限な数である.長さの型のうち

𝑎X𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)𝐷(𝑃𝑄)𝛿

を満たすものを集め,その型類(定義 11.1.1)を合わせたものをとする.

第二種の誤りを抑える.をとりとおくと,は上の条件を満たす長さの型である.命題 11.1.4について,およびについて当てると

𝑄𝑛({𝑥})=exp(𝑛(𝐻(𝑃)+𝐷(𝑃𝑄))),𝑃𝑛({𝑥})=exp(𝑛(𝐻(𝑃)+𝐷(𝑃𝑃)))

であり,比をとるとである.相対エントロピーの定義(1.6 節)から

𝐷(𝑃𝑄)𝐷(𝑃𝑃)=𝑎𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)𝑎𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑃(𝑎)=𝑎𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)

である(の文字では三つの項がすべてである).の定め方よりこの値は以上だから,である.これをについて足し合わせ,を使うと

𝛽𝑛(A𝑛)=𝑄𝑛(A𝑛)𝑒𝑛(𝐷(𝑃𝑄)𝛿)

を得る.

第一種の誤りを抑える.正の実数を一つとり,第2章の情報源の分布をとして,幅の強典型集合定義 2.4.1)を考える(は全点で正だから,2.4 節の設定を満たす).ならどの文字でもであり,だから,三角不等式より

𝑎ˆ𝑃𝑥(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)𝐷(𝑃𝑄)=𝑎(ˆ𝑃𝑥(𝑎)𝑃(𝑎))log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)𝛿𝑎log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)

である.右端はに比例し,和はだけで決まる有限の数だから,を小さくとれば右端を以下にできる.そのようなを一つ選んでおく.するとの型を定める条件を満たすのでであり,である.第2章 定理 2.4.3 よりだから

𝛼𝑛(A𝑛)=𝑃𝑛(Ac𝑛)𝑃𝑛((𝐴(𝑛)𝛿)c)0

であり,十分大きいである.

そのについては定義 11.4.3 の下限をとる範囲に入るから

𝛽𝑛(𝜀)𝛽𝑛(A𝑛)𝑒𝑛(𝐷(𝑃𝑄)𝛿)

である.は正だから対数がとれ,は単調だからであり,両辺をで割れば主張を得る.

形式化: 正であること steinOptimalBeta_pos (ソース)

形式化上の注記. 本文の証明は受容域を型の方法で作り,第一種の誤りを 第2章 定理 2.4.3 で押さえた.形式化は別の道筋をとる.対数尤度比の相加平均に大数の強法則を当て,その平均がに近い系列の全体 steinTypicalSet (InformationTheory/Shannon/Stein/Achievability.lean) を受容域にとる.指数の下界を述べる宣言は steinOptimalBeta_log_ge_of_achievability (InformationTheory/Shannon/Stein/OptimalExponent.lean) であるが,これは情報源を確率変数の列として受け取る形で述べられており,その列が独立で同分布であること,各項の像がであること,列全体の像が積分布になることなど,本文の 定理 11.4.4 に無い仮定を七つ持つ.結論の式に現れるのはだけで,確率変数の列はどこにも現れない.そこでこの宣言は本文の主張そのものの形式化とはみなさず,ポインタには挙げないことにした.正であることの宣言のほうにはこの七つの仮定は無い.

右辺にが現れないことに注意しておく.水準をより大きい範囲でどれだけ厳しくとっても,にいくらでも近いところまで下から押さえられる,というのが 定理 11.4.4 である.水準が効くのは,この不等式が成り立ちはじめるの大きさのほうである.が指数そのものに効かないのは,第二種の誤りを抑える段でを一度も使っていないからである.

達成可能性は,指数に届く検定があることを言った.逆は,どの検定もそれを大きくは超えられないことを言う.道具は 定理 1.8.1,すなわち像測度をとると相対エントロピーは増えない,である.受容域に入るかどうかだけを見る写像でを二点に潰すと,二点の上の相対エントロピーが以下になる.右辺を先に計算しておく.

補題 11.4.5. を空でない有限アルファベット,𝑃上の全点で正の分布,𝑃𝑛をそれぞれの重の積分布とし,とすると

𝐷(𝑃𝑛𝑄𝑛)=𝑛𝐷(𝑃𝑄)

である(1.6 節の相対エントロピー).

証明. は全点で正だから,どのでもは正で,どの対数も有限な数である.積の対数は和だから,相対エントロピーの定義(1.6 節)より

𝐷(𝑃𝑛𝑄𝑛)=𝑥X𝑛𝑃𝑛({𝑥})𝑛1𝑖=0log𝑃(𝑥𝑖)𝑄(𝑥𝑖)=𝑛1𝑖=0 𝑥X𝑛𝑃𝑛({𝑥})log𝑃(𝑥𝑖)𝑄(𝑥𝑖)

である(有限個の項の和なので順序を入れ替えてよい).を一つ固定し,内側の和をの値で分類する.を満たすにわたるの和は,に残りの座標についての和を掛けたもの,すなわちである.よって内側の和は

𝑎X𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)=𝐷(𝑃𝑄)

に等しい.これがに依らないので,について足すとになる.

形式化: klDiv_pi_eq_n_smul (ソース)

定理 11.4.6(Stein の補題の逆). を空でない有限アルファベット,𝑃上の全点で正の分布,𝜀 (0,1)とし,定義 11.4.3 のとおりとする.は正であり(定理 11.4.4),

1𝑛log𝛽𝑛(𝜀)𝐷(𝑃𝑄)1𝜀+log2𝑛(1𝜀)

である(1.6 節の相対エントロピー).

証明. まず,を満たす受容域を一つ固定し,について同じ形の不等式を示す.

のときはであり,右辺は 定理 1.6.1 より非負だから不等式は成り立つ.以下とする.よりだからは空でなく,が全点で正だからはどちらも正である.

受容域に入るかどうかだけを見る写像を,のとき,そうでないときで定める.像測度(定理 1.8.1)は上の分布で,を与え,を与える.定理 1.8.1補題 11.4.5 より

𝑃𝑛(A𝑛)log𝑃𝑛(A𝑛)𝑄𝑛(A𝑛)+𝑃𝑛(Ac𝑛)log𝑃𝑛(Ac𝑛)𝑄𝑛(Ac𝑛)=𝐷(𝑓𝑃𝑛𝑓𝑄𝑛)𝐷(𝑃𝑛𝑄𝑛)=𝑛𝐷(𝑃𝑄)

である.

左辺を下から抑える.だから第項は以上であり,第項はに等しい.だから,二つを合わせると左辺は

𝐻𝑏(𝑃𝑛(A𝑛))𝑃𝑛(A𝑛)log𝑄𝑛(A𝑛)

以上である(例 1.1.2 の二値エントロピー関数).の値は点の上の分布のエントロピーだから 定理 1.1.5 より以下であり,よって

𝑃𝑛(A𝑛)log𝑄𝑛(A𝑛)𝑛𝐷(𝑃𝑄)+log2

である.

よりであり,だから

(1𝜀)(log𝑄𝑛(A𝑛))𝑃𝑛(A𝑛)log𝑄𝑛(A𝑛)𝑛𝐷(𝑃𝑄)+log2

である.両辺をで割ると,だから

1𝑛log𝛽𝑛(A𝑛)𝐷(𝑃𝑄)1𝜀+log2𝑛(1𝜀)

を得る.

最後にに移る.の部分集合は有限個しかないから,定義 11.4.3 の下限は最小値であり,を満たすあるとなる.そのに上で示したことを当てればよい.

形式化: steinOptimalBeta_log_le_of_converse (ソース)

上界には因子が残っている.出どころは,第一種の誤りをまで許したために,に掛かる重みからまで下がりうることである.水準を緩めるほどこの因子は大きくなり,上界はから離れる.達成可能性の側(定理 11.4.4)がに依らなかったのと対照的である.

系 11.4.7(水準での指数の挟み込み). を空でない有限アルファベット,𝑃上の全点で正の分布,とし,定義 11.4.3 のとおりとすると

𝐷(𝑃𝑄)liminf𝑛(1𝑛log𝛽𝑛(𝜀))limsup𝑛(1𝑛log𝛽𝑛(𝜀))𝐷(𝑃𝑄)1𝜀

である(1.6 節の相対エントロピー).

証明. 定理 11.4.4 より,どのについても,十分大きいすべてのである.よって下極限は以上であり,は任意だから以上である.

定理 11.4.6 より,どのについてもである.第項はに収束するから,上極限は以下である.下極限が上極限以下であることと合わせて,三つの不等式を得る.

形式化上の注記. 系 11.4.7 の両側の不等式は 定理 11.4.4定理 11.4.6 の形でそれぞれ単独に形式化されているが,二つを合わせた挟み込みに対応する単独の宣言は無い.上端がに依らずになる形も形式化されていない.それに近いのは steinOptimalBeta_log_le_of_strong_converse (InformationTheory/Shannon/StrongStein.lean) で,こちらはで割る因子を持たないかわりに,任意にとれるぶんの余裕と,第一種の誤りに関わる補正項とが結論の右端に残る.この宣言も情報源を確率変数の列として受け取る形で述べられており,達成可能性の側の下界と同じ七つの仮定を持つ.

本書が示したのは,水準を固定したときのこの挟み込みまでである.上端がに一致すること,すなわち Stein の補題の通常の述べ方は示していない.そこまで詰めるには,第一種の誤りをまで許したままの検定についても,第二種の誤りの指数がを超えないことを示す必要がある.本書がとったのはデータ処理不等式の経路で,定理 11.4.6 の証明がに掛かる重みをで下から抑えるところで因子が入るから,この経路のままでは因子は消えない.に近づけると右端はに近づくので,水準を厳しくとるほど上下の隔たりは狭くなる.

数値で見る

例 11.4.8(二値の Stein の指数の数値). とし,で定まる分布,で定まる分布,とする.𝑃𝑛をそれぞれの重の積分布,定義 11.1.1 の型,𝛼𝑛定義 11.4.1 のとおり,定義 11.4.3 のとおりとすると,次の四つが成り立つ.

  1. の値は約ナットである.
  2. であり,右端の値は約である.
  3. のときの 定理 11.4.6 の右辺の値は約である.
  4. ととると,の値は約以下であり,で,その値は約である.とくにである.

証明.

  1. 補題 11.2.5 よりである(例 1.1.2 の二値エントロピー関数).𝐻𝑏(0.1) =0.32508だから,値はである.

  2. はどちらも全点で正でだから,系 11.4.7ととって当てると挟み込みを得る.右端の値は第の主張よりである.

  3. 定理 11.4.6 の右辺はである.

  4. このは,定理 11.4.4 の証明がととって作る受容域にほかならない.実際,長さの型についてと書くと,相対エントロピーの定義(1.6 節)とから

𝑎𝑃(𝑎)log𝑃(𝑎)𝑄(𝑎)𝐷(𝑃𝑄)=(𝑘1000.1)(log0.2log1.8)=log9100(10𝑘)

であり,だから,この絶対値が以下であることはと同値で,は整数だからこれはと同値である.系列に含まれるの個数をと書くとだから,を満たす系列の全体である.の個数がである長さの系列は,個の位置からを置く個を選ぶ選び方の数だけあるので個であり,そのどれについてもである.よって

𝛼100(A100)=3𝑘=0(100𝑘)0.1𝑘0.9100𝑘+100𝑘=17(100𝑘)0.1𝑘0.9100𝑘,𝛽100(A100)=210016𝑘=4(100𝑘)

であり,どちらも有限個の項の和で,計算すると前者は,後者はである.前者は以下だから定義 11.4.3 の下限をとる範囲に入り,である.定理 11.4.4 より正で,は単調だから,対数をとってで割るとを得る.

この例 11.2.6 と同じ偏ったコインである.系 11.4.7 が指数に与える上下の隔たりはほどで,水準より緩めるとこの隔たりは広がる.有限のでの上界(第の主張)が極限の上界より大きいのは 定理 11.4.6 の第項のぶんで,を大きくすればその差はに向かう.第の主張は,型で切った検定を一つ実際に作ってでの値を出したものである.の個数がの前後以内という受容域だけで,第一種の誤りはを下回り,第二種の誤りはの桁まで落ちる.そこからが出て,第の主張の上界と挟むと,での指数はこの二つの数のあいだにある.幅が広いのは,ととったぶん受容域を広めに作ったからで,を小さくとってを大きくすれば下からの評価はに近づく(定理 11.4.4).

形式化上の注記. 例 11.4.8 の数値に対応する宣言は無い.形式化には,具体的な分布を入れて Stein の補題の指数を計算した実例が置かれていない.

本節は第一種の誤りを水準で抑え,第二種の誤りだけを小さくした.二つの誤りを同時に小さくしたいときには,どちらか一方を優先する理由がなくなり,指数もではない別の量になる.それを次節で扱う.

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