11.5 Bayes 誤り確率と Chernoff 情報
前節は二つの誤りを対等に扱わなかった.第一種の誤りを一定の水準で抑え,そのうえで第二種の誤りだけを小さくしたからである.どちらを帰無仮説にするかを決める理由がないときには,この非対称を持ち込みたくない.そこで立て方を変える.真の分布が𝑃と𝑄のどちらであるかを先に確率1/2ずつで選んでおき,出てきた系列を見てそれを当てる.誤る確率は二種類の誤りを1/2ずつの重みで足したものになり,これを小さくすることが目標になる.本節はこの誤り確率も,𝑃と𝑄が違う分布であれば𝑛とともに指数で落ちること,そしてその指数が𝐷(𝑃 ‖ 𝑄)とは別の量になることを示す.
答え方を一つ決める.事前確率が等しいのだから,系列𝑥を見て𝑃𝑛({𝑥})と𝑄𝑛({𝑥})を比べ,大きいほうの仮説を答えることにする.真が𝑃で𝑄と答えてしまうのは𝑃𝑛({𝑥}) <𝑄𝑛({𝑥})となる𝑥が出たときで,その確率は𝑃𝑛で測る.真が𝑄で𝑃と答えてしまうのは𝑃𝑛({𝑥}) ≥𝑄𝑛({𝑥})となる𝑥が出たときで,その確率は𝑄𝑛で測る.どちらの場合でも,𝑥が誤りに寄与させるのは𝑃𝑛({𝑥})と𝑄𝑛({𝑥})の小さいほうである.事前確率の1/2を掛けて𝑥について足すと,次の形になる.
Bayes 誤り確率
定義 11.5.1(Bayes 誤り確率). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の分布,𝑃𝑛,𝑄𝑛をそれぞれの𝑛重の積分布とし,𝑛 ≥1とする.真の分布が𝑃と𝑄から事前確率1/2ずつで選ばれるとし,系列𝑥 ∈X𝑛に対して𝑃𝑛({𝑥}) ≥𝑄𝑛({𝑥})ならば𝑃を,そうでなければ𝑄を答える決定を考える.この決定の Bayes 誤り確率 を
𝑃(𝑛)𝑒:=12∑𝑥∈X𝑛min(𝑃𝑛({𝑥}),𝑄𝑛({𝑥}))で定める.
右辺の各項は,その系列が出たときに払う誤りの確率である(添字の𝑒は誤りを表す固定の文字で,本節の後半で置く中間分布𝑃𝜆(定義 11.5.9)のように実数のパラメータを添えたものではない).𝑃と𝑄が離れているほど,どの系列でも二つの確率の一方が他方より格段に小さくなり,小さいほうだけを足した和は小さくなる.逆に𝑃 =𝑄なら各項は𝑃𝑛({𝑥})そのもので,その総和は1だから𝑃(𝑛)𝑒 =1/2である.すなわち,二つの仮説がまったく同じで見分けようがないときの誤り確率が,当てずっぽうと同じ1/2になる.この決定がほかのどの決定よりも誤り確率が小さいことは本書では示さない.示すには決定の全体をわたって最小をとる形に問題を立て直す必要があり,本節が測るのは上の決定の誤り確率である.形式化にもその形の宣言は無い.
実数の指数をもつべき乗
このあと置く量の式には,実数の指数をもつべき乗が現れる.底が0になる場合まで含めて,先に定めておく.
定義 11.5.2(実数の指数をもつべき乗). 正の実数𝑢と実数𝑠に対し
𝑢𝑠:=𝑒𝑠log𝑢と定める(本章の底は自然対数なので,𝑒のべき乗は指数関数そのものである).また非負の実数𝑠に対し0𝑠を,𝑠 >0のとき0,𝑠 =0のとき1と定める.負の𝑠に対する0𝑠は定めない.
定め方から,正の𝑢についてはlog(𝑢𝑠) =𝑠log𝑢である.また指数法則𝑒𝑠+𝑠′ =𝑒𝑠𝑒𝑠′から,正の𝑢について𝑢𝑠 𝑢𝑠′ =𝑢𝑠+𝑠′と(𝑢𝑠)𝑠′ =𝑢𝑠𝑠′が従う.00 =1と定めたのは,𝑠 =0のとき𝑢𝑠が正の𝑢でつねに1になるので,底を0まで動かしてもその値を保つためである.
Chernoff の分配和
誤り確率の各項を上から抑えるところから始める.min(𝑃𝑛({𝑥}), 𝑄𝑛({𝑥}))は,どの𝜆 ∈[0,1]でも𝑃𝑛({𝑥})1−𝜆 𝑄𝑛({𝑥})𝜆以下である(補題 11.5.4).この右辺は座標ごとの積だから,𝑥 ∈X𝑛について足すと1文字ぶんの和の𝑛乗になる(補題 11.5.5).つまり誤り確率の上界は,1文字ぶんの和ひとつで決まり,しかも𝑛乗の形で決まる.その1文字ぶんの和が次に定めるZ(𝜆)であり,𝜆を上界がいちばん小さくなるように選んだときの指数が,本節の主役である Chernoff 情報になる.
定義 11.5.3(Chernoff の分配和と Chernoff 情報). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,べき乗を 定義 11.5.2 のとおりとする.実数𝜆に対し
Z(𝜆):=∑𝑎∈X𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆を Chernoff の分配和 と呼ぶ.Z(𝜆)は正の数の有限和だから正であり,logZ(𝜆)が定まる.𝑃と𝑄の Chernoff 情報 を
𝐶∗(𝑃,𝑄):=−inf0≤𝜆≤1logZ(𝜆)で定める.
Z(𝜆)は,各文字で𝑃と𝑄の値を重み1 −𝜆と𝜆で幾何的に混ぜ,足し合わせたものである.𝜆を0から1へ動かすと重みは𝑃の側から𝑄の側へ移り,𝜆を止めるごとに,混ぜた値をZ(𝜆)で割って総和を1にした分布が一つ定まる(花文字のZは,第10章 定義 10.2.1 の分配関数𝑍とは別の記号である.分母という役割は同じで,違いは重みを付ける基準が一様分布ではなく𝑃であることである).その分布が 定義 11.5.9 の中間分布であり,本節の後半で主役になる.本節の𝜆は,こうして𝑃と𝑄を混ぜる度合いを表す実数である(第10章 10.4 節が Lagrange 乗数に使う𝜆とも,補題 1.1.9 や 第9章 補題 9.3.1 が凸結合の重みに使う𝜆とも別である.本章では凸結合の重みには𝜃を当てる).定義 11.5.3 の下限が実際に最小値として達成されること,したがって𝐶∗(𝑃,𝑄)が実数として定まることは 命題 11.5.7 で示す(星が付く𝐶∗は,第6章 定義 6.1.4 の通信路容量𝐶(𝑊)や第8章 定義 8.2.1 のガウス通信路の容量とは別の量である).
二つの道具
補題 11.5.4(加重相加相乗平均と最小値の上界). 𝑢 ≥0,𝑣 ≥0を実数,𝜃 ∈[0,1]とし,べき乗を 定義 11.5.2 のとおりとすると
𝑢1−𝜃𝑣𝜃≤(1−𝜃)𝑢+𝜃𝑣である.またmin(𝑢,𝑣) ≤𝑢1−𝜃𝑣𝜃である.
証明. どちらの主張も𝑢か𝑣が0の場合を先に片づける.𝜃 =0のときは左辺が𝑢1𝑣0 =𝑢,右辺が𝑢で,第1の主張は等号として成り立ち,min(𝑢,𝑣) ≤𝑢より第2の主張も成り立つ.𝜃 =1のときも同様である.𝜃 ∈(0,1)で𝑢 =0または𝑣 =0のときは,定義 11.5.2 より𝑢1−𝜃𝑣𝜃 =0であり,右辺は非負の数の和だから第1の主張が成り立ち,min(𝑢,𝑣) =0だから第2の主張も成り立つ.
以下𝑢 >0,𝑣 >0とする.1.1 節で認めたlogの狭義凹性から出た有限 Jensen の不等式(補題 1.1.9)を,2点𝑢,𝑣と重み1 −𝜃,𝜃に当てると
(1−𝜃)log𝑢+𝜃log𝑣≤log((1−𝜃)𝑢+𝜃𝑣)である.左辺はlog(𝑢1−𝜃) +log(𝑣𝜃) =log(𝑢1−𝜃𝑣𝜃)に等しい.ここで,二つの正の数について対数の値が≤ならもとの数も≤である.というのも,もとの数が真に大きければ対数も真に大きいからである.これを当てて第1の主張を得る.
第2の主張に移る.𝑢 ≤𝑣の場合を見れば足りる.𝑢と𝑣を入れ替えて𝜃を1 −𝜃に取り替えると主張の両辺が同じ形になるので,𝑣 ≤𝑢の場合はそこから出るからである.𝑢 ≤𝑣ならlog𝑢 ≤log𝑣であり,𝜃 ≥0を掛けて(1 −𝜃)log𝑢を足すと
log𝑢=(1−𝜃)log𝑢+𝜃log𝑢≤(1−𝜃)log𝑢+𝜃log𝑣=log(𝑢1−𝜃𝑣𝜃)となる.ふたたび対数の値の大小からもとの数の大小に移して𝑢 ≤𝑢1−𝜃𝑣𝜃であり,min(𝑢,𝑣) =𝑢だから主張を得る.◻
補題 11.5.5. Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布,𝑃𝑛,𝑄𝑛をそれぞれの𝑛重の積分布とし,𝑛 ≥1,𝜆 ∈[0,1]とする.べき乗を 定義 11.5.2,Zを 定義 11.5.3 のとおりとすると
∑𝑥∈X𝑛𝑃𝑛({𝑥})1−𝜆𝑄𝑛({𝑥})𝜆=Z(𝜆)𝑛である.
証明. 有限個の正の数の積のべき乗は,べき乗の積である(両辺の対数をとると,どちらも指数と各因子の対数の積の和になる).𝑃と𝑄は全点で正だから𝑃𝑛({𝑥}) =∏𝑖<𝑛𝑃(𝑥𝑖)の因子はどれも正で,この規則が使えて
𝑃𝑛({𝑥})1−𝜆𝑄𝑛({𝑥})𝜆=𝑛−1∏𝑖=0𝑃(𝑥𝑖)1−𝜆𝑄(𝑥𝑖)𝜆である.これを𝑥 ∈X𝑛について足す.分配法則を𝑛回使うと(𝑛についての帰納法),座標ごとに独立に和をとった形になり
∑𝑥∈X𝑛 𝑛−1∏𝑖=0𝑃(𝑥𝑖)1−𝜆𝑄(𝑥𝑖)𝜆=𝑛−1∏𝑖=0 ∑𝑎∈X𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆=Z(𝜆)𝑛を得る.◻
Chernoff 限界
定理 11.5.6(Chernoff 限界). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,𝑛 ≥1,𝜆 ∈[0,1]とする.𝑃(𝑛)𝑒を 定義 11.5.1,Zを 定義 11.5.3 のとおりとすると
𝑃(𝑛)𝑒≤12Z(𝜆)𝑛である.
証明. 定義 11.5.1 の各項に 補題 11.5.4 の第2の主張を,𝑢 :=𝑃𝑛({𝑥}),𝑣 :=𝑄𝑛({𝑥}),重みを𝜃 :=𝜆として当てると
min(𝑃𝑛({𝑥}),𝑄𝑛({𝑥}))≤𝑃𝑛({𝑥})1−𝜆𝑄𝑛({𝑥})𝜆である.𝑥 ∈X𝑛について足し,補題 11.5.5 を当てると右辺の和はZ(𝜆)𝑛になる.両辺に1/2を掛ければ主張を得る.◼
この不等式はどの𝜆 ∈[0,1]でも成り立つから,いちばんよい𝜆を選んでよい.Z(𝜆)𝑛 =𝑒𝑛logZ(𝜆)だから,選ぶべきはlogZ(𝜆)を最小にする𝜆であり,そのときの上界の指数が 定義 11.5.3 の𝐶∗(𝑃,𝑄)である.その最小値が実際に達成されることを次に確かめる.そこで最大値定理を借りる.
Weierstrass の最大値定理を借りる. 借りるのは「有限次元の実ベクトル空間の空でない有界閉集合の上の実数値連続関数は最大値をとる」という形である.直接当てる相手は二つで,一つは閉区間[0,1] ⊆ℝの上の実数値関数𝜆 ↦ −logZ(𝜆)(命題 11.5.7),もう一つは,実ベクトル空間ℝXの部分集合である確率単体の閉部分集合の上の実数値関数˜𝑃 ↦ −𝐷(˜𝑃 ‖ 𝑄)(11.6 節の 定理 11.6.2)である.第6章 6.1 節が通信路容量の達成(定理 6.1.5)のために,第9章 9.1 節がレート歪み関数の下限が最小値であること(命題 9.1.8)のために借りたのと同じ定理である.本書はこの最大値定理を証明しないが,形式化されていないわけではない.定理 11.6.2 の形式化は,Mathlib にある無条件の機械検証済みのこの定理をそのまま呼び出しているからである.
以下,微積分の計算規則(一次結合・積・商・合成・有限和が連続性と微分可能性を保つこと,和の法則・積の法則・商の法則・合成関数の微分の法則,本章の底のもとでの(𝑒𝑠)′ =𝑒𝑠と(log𝑠)′ =1/𝑠,微分係数が差分商の極限であり極限が広義の不等号を保つこと)は既知とする.
命題 11.5.7. Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,Z,𝐶∗を 定義 11.5.3 のとおりとする.このときZ(0) =Z(1) =1である.また𝜆 ↦logZ(𝜆)は[0,1]の上で連続かつ凸であり,[0,1]の上で最小値をとる.とくに 定義 11.5.3 の下限は最小値として達成され,𝐶∗(𝑃,𝑄) ≥0である.
証明. 両端の値から見る.定義 11.5.2 より𝑄(𝑎)0 =1,𝑃(𝑎)1 =𝑃(𝑎)だからZ(0) =∑𝑎𝑃(𝑎) =1であり,同じくZ(1) =∑𝑎𝑄(𝑎) =1である.
連続性を見る.𝑃は全点で正だから,定義 11.5.2 と指数法則より
𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆=𝑃(𝑎)exp(𝜆log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎))である.右辺は𝜆の1次式に指数関数を合成したものに定数を掛けたもので,Zはその有限和だから,微積分の計算規則よりZは連続である.Z(𝜆) >0だから,logとの合成もふたたび連続である.
凸性に移る.Zは上の書き換えのとおり指数関数の重み付き和だから,logZは第10章 命題 10.4.2 が凸性を示した対数分配関数と同じ形をしている.ただし第10章の示し方(2階導関数が分散に等しいので非負であること)に使う判定法を本節は借りていないので,以下は 補題 11.5.4 の第1の主張を当てて,2点についての不等式として直接確かめる.𝜆,𝜆′を[0,1]の数,𝜃 ∈[0,1]とし,各文字𝑎について𝑐𝑎 :=𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆,𝑑𝑎 :=𝑃(𝑎)1−𝜆′𝑄(𝑎)𝜆′と置く.どちらも正で,𝑎について足すと∑𝑎𝑐𝑎 =Z(𝜆),∑𝑎𝑑𝑎 =Z(𝜆′)である.指数法則から
(𝑐𝑎Z(𝜆))1−𝜃(𝑑𝑎Z(𝜆′))𝜃=𝑃(𝑎)1−((1−𝜃)𝜆+𝜃𝜆′)𝑄(𝑎)(1−𝜃)𝜆+𝜃𝜆′Z(𝜆)1−𝜃Z(𝜆′)𝜃である.左辺に 補題 11.5.4 の第1の主張を当て,𝑎について足すと,𝑐𝑎/Z(𝜆)の総和も𝑑𝑎/Z(𝜆′)の総和も1だから
∑𝑎(𝑐𝑎Z(𝜆))1−𝜃(𝑑𝑎Z(𝜆′))𝜃≤∑𝑎((1−𝜃)𝑐𝑎Z(𝜆)+𝜃𝑑𝑎Z(𝜆′))=1である.右辺の式と見比べると,これは
Z((1−𝜃)𝜆+𝜃𝜆′)≤Z(𝜆)1−𝜃Z(𝜆′)𝜃と同じことである.両辺は正だから,対数をとってlogZ((1 −𝜃)𝜆 +𝜃𝜆′) ≤(1 −𝜃)logZ(𝜆) +𝜃logZ(𝜆′)を得る.これが凸性である.
最小値の存在に移る.[0,1]はℝの空でない有界閉集合で,−logZはその上で連続だから,借りた Weierstrass の最大値定理より−logZは[0,1]で最大値をとる.すなわちlogZは[0,1]で最小値をとり,定義 11.5.3 の下限はその最小値である.最後に,最小値はlogZ(0) =log1 =0以下だから,符号を変えて𝐶∗(𝑃,𝑄) ≥0である.◼
系 11.5.8(Chernoff 限界の達成可能性). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,𝑃(𝑛)𝑒を 定義 11.5.1,𝐶∗を 定義 11.5.3 のとおりとすると
lim inf𝑛→∞(−1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒)≥𝐶∗(𝑃,𝑄)である.
証明. まず𝑃(𝑛)𝑒 >0を見る.𝑃と𝑄は全点で正だから,どの𝑥 ∈X𝑛でも𝑃𝑛({𝑥})と𝑄𝑛({𝑥})は正で,その小さいほうも正である.X𝑛は空でないから,定義 11.5.1 の和は正の数の和で正である.
命題 11.5.7 よりlogZは[0,1]で最小値をとる.それを与える𝜆を一つとるとlogZ(𝜆) = −𝐶∗(𝑃,𝑄)であり,定理 11.5.6 より
𝑃(𝑛)𝑒≤12Z(𝜆)𝑛=12𝑒−𝑛𝐶∗(𝑃,𝑄)である.両辺は正で,対数は単調だから,対数をとって−𝑛で割ると
−1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒≥𝐶∗(𝑃,𝑄)+log2𝑛≥𝐶∗(𝑃,𝑄)である.どの𝑛 ≥1でもこれが成り立つから,下極限も𝐶∗(𝑃,𝑄)以上である.◼
指数が𝐶∗(𝑃,𝑄)に届くことは,これで分かった.残るのはそれを超えないことである.超えないことを示すには誤り確率を下から抑えなければならず,そのためにZ(𝜆)を分母にして作る分布を導入する.
中間分布
定義 11.5.9(Chernoff の中間分布). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,べき乗を 定義 11.5.2,Zを 定義 11.5.3 のとおりとする.実数𝜆に対し
𝑃𝜆(𝑎):=𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆Z(𝜆)(𝑎∈X)で定まるX上の関数を Chernoff の中間分布 と呼ぶ.分子は正で,𝑎について足したものが分母Z(𝜆)だから,𝑃𝜆はX上の全点で正の分布である.
両端の値を見ておく.𝜆を0から1へ動かすと𝑃𝜆が𝑃から𝑄へ移る,というのが次の命題である.
命題 11.5.10. Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,𝑃𝜆を 定義 11.5.9 のとおりとすると𝑃0 =𝑃かつ𝑃1 =𝑄である.
証明. 命題 11.5.7 よりZ(0) =Z(1) =1である.定義 11.5.2 より,どの文字でも𝑃(𝑎)1−0𝑄(𝑎)0 =𝑃(𝑎)だから,定義 11.5.9 より𝑃0(𝑎) =𝑃(𝑎)/Z(0) =𝑃(𝑎)である.同じく𝑃(𝑎)1−1𝑄(𝑎)1 =𝑄(𝑎)だから𝑃1(𝑎) =𝑄(𝑎)/Z(1) =𝑄(𝑎)である.◼
移り方は各点での値を幾何的に混ぜるもので,二つの分布を線分で結ぶ混ぜ方とは別である.定義 11.5.2 と指数法則から𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆 =𝑃(𝑎)exp(𝜆log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎))である.すなわち𝑃𝜆は,𝑃の各点の値に指数の重みを掛けて総和が1になるように割ったものであり,この作り方は大偏差論で指数傾斜と呼ばれる.
この中間分布が,次の命題で Chernoff 情報に意味を与える.
命題 11.5.11. Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,Z,𝐶∗を 定義 11.5.3,𝑃𝜆を 定義 11.5.9 のとおりとする.このとき𝜆 ↦logZ(𝜆)はℝの上で微分可能で,どの実数𝜆でもその導関数は
𝑑𝑑𝜆logZ(𝜆)=∑𝑎∈X𝑃𝜆(𝑎)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)である.さらに,logZの[0,1]上の最小値を与える𝜆∗が開区間(0,1)に属するならば,この和は𝜆 =𝜆∗で0になり
𝐶∗(𝑃,𝑄)=𝐷(𝑃𝜆∗∥𝑃)=𝐷(𝑃𝜆∗∥𝑄)である(𝐷は 1.6 節の相対エントロピー).
証明. 𝑃は全点で正だから,定義 11.5.2 と指数法則より𝑃(𝑎)1−𝜆𝑄(𝑎)𝜆 =𝑃(𝑎)exp(𝜆log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎))である.𝑄(𝑎)/𝑃(𝑎)は正だからlog𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)は𝜆に依らない有限な数である.微積分の計算規則より,1次式と指数関数の合成は微分可能で,𝜆についての導関数は同じ関数にlog𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)を掛けたものである.有限和も微分可能だから
Z′(𝜆)=∑𝑎𝑃(𝑎)exp(𝜆log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎))log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)である.Z(𝜆) >0だから,合成関数の微分の法則と(log𝑠)′ =1/𝑠よりlogZも微分可能で,その導関数はZ′(𝜆)/Z(𝜆)である.各項をZ(𝜆)で割ると 定義 11.5.9 の𝑃𝜆(𝑎)になるから,導関数は主張の和に等しい.
後半に移る.𝜆∗ ∈(0,1)が[0,1]上の最小値を与えるとし,logZの導関数を𝜆∗で評価する.0 <𝑟 <1 −𝜆∗を満たす実数𝑟をとると𝜆∗ +𝑟 ∈[0,1]だからlogZ(𝜆∗ +𝑟) ≥logZ(𝜆∗)であり,差分商(logZ(𝜆∗ +𝑟) −logZ(𝜆∗))/𝑟は非負である.𝑟を0に近づけると,微積分の計算規則より差分商の極限は𝜆∗での微分係数であり,極限は広義の不等号を保つから,微分係数は非負である.同じことを−𝜆∗ <𝑟 <0で行うと,分子は非負で分母が負だから差分商は非正であり,微分係数は非正である.よって微分係数は0,すなわち前半の和は𝜆∗で0になる.
最後に二つの相対エントロピーを計算する.定義 11.5.9 と指数法則から
𝑃𝜆(𝑎)𝑃(𝑎)=1Z(𝜆)exp(𝜆log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)),𝑃𝜆(𝑎)𝑄(𝑎)=1Z(𝜆)exp(−(1−𝜆)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎))である.対数をとって𝑃𝜆(𝑎)を掛け,𝑎について足すと,1.6 節の相対エントロピーの定義と𝑃𝜆の総和が1であることから
𝐷(𝑃𝜆∥𝑃)=𝜆∑𝑎𝑃𝜆(𝑎)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)−logZ(𝜆),𝐷(𝑃𝜆∥𝑄)=−(1−𝜆)∑𝑎𝑃𝜆(𝑎)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎)−logZ(𝜆)である.𝜆 =𝜆∗では和が0だから,どちらも−logZ(𝜆∗)に等しい.𝜆∗は最小値を与えるので,定義 11.5.3 より−logZ(𝜆∗) =𝐶∗(𝑃,𝑄)である.◼
等式𝐶∗(𝑃,𝑄) =𝐷(𝑃𝜆∗ ‖ 𝑃) =𝐷(𝑃𝜆∗ ‖ 𝑄)は,Chernoff 情報の読み方を与える.𝜆を0から1へ動かすと中間分布は𝑃から𝑄へ移る(命題 11.5.10)から,両端では二つの隔たりの一方が0になる.𝜆 =0では𝑃からの隔たりが0で𝑄からの隔たりが𝐷(𝑃 ‖ 𝑄),𝜆 =1では𝑄からの隔たりが0で𝑃からの隔たりが𝐷(𝑄 ‖ 𝑃)である.中間分布のうち𝑃からの隔たりと𝑄からの隔たりが等しくなる点がとれるとき,その共通の値が Chernoff 情報である.二つの分布のちょうど中ほどまでの距離だ,と読みたくなるが,相対エントロピーは距離ではない(1.6 節)ので,そう読むのは言い過ぎである.言えるのは,二つの隔たりが釣り合う点での値だということである.
この等式が使えるのは,最小値を与える𝜆∗が端点でないときだった.その条件は,𝑃と𝑄が違う分布でありさえすれば満たされる.
命題 11.5.12. Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,Zを 定義 11.5.3 のとおりとする.𝑃 ≠𝑄ならば,logZの[0,1]上の最小値を与える実数𝜆はすべて開区間(0,1)に属する.
証明. まず両端での微分係数の符号を見る.命題 11.5.11 の導関数の式に 命題 11.5.10 を当てると,𝑃0 =𝑃だから𝜆 =0での微分係数は∑𝑎𝑃(𝑎)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎) = −𝐷(𝑃 ‖ 𝑄)であり,𝑃1 =𝑄だから𝜆 =1での微分係数は∑𝑎𝑄(𝑎)log𝑄(𝑎)𝑃(𝑎) =𝐷(𝑄 ‖ 𝑃)である(𝐷は 1.6 節の相対エントロピー).𝑃 ≠𝑄だから 定理 1.6.1 よりどちらの相対エントロピーも正で,𝜆 =0での微分係数は負,𝜆 =1での微分係数は正である.
最小値を与える𝜆が0だったとする.0 <𝑟 ≤1についてlogZ(𝑟) ≥logZ(0)だから差分商(logZ(𝑟) −logZ(0))/𝑟は非負であり,𝑟を0に近づけると,微積分の計算規則より極限は𝜆 =0での微分係数だから,それが非負となって上に反する.最小値を与える𝜆が1だったときも同じで,−1 ≤𝑟 <0について差分商(logZ(1 +𝑟) −logZ(1))/𝑟をとると,分子は非負で分母は負だから差分商は非正であり,𝜆 =1での微分係数が非正となって,やはり上に反する.よって最小値を与える𝜆は(0,1)に属する.◼
逆
定理 11.5.13(Chernoff 限界の逆). Xを空でない有限アルファベット,𝑃,𝑄をX上の全点で正の分布とし,𝑃(𝑛)𝑒を 定義 11.5.1,Z,𝐶∗を 定義 11.5.3,𝑃𝜆を 定義 11.5.9 のとおりとする.logZの[0,1]上の最小値を与える𝜆∗が開区間(0,1)に属するならば
lim sup𝑛→∞(−1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒)≤𝐶∗(𝑃,𝑄)である.
証明. ˜𝑃 :=𝑃𝜆∗と置く.定義 11.5.9 より˜𝑃はX上の全点で正の分布であり,命題 11.5.11 より𝐷(˜𝑃 ‖ 𝑃) =𝐷(˜𝑃 ‖ 𝑄) =𝐶∗(𝑃,𝑄)である.
˜𝑃に近い型を作る.Xは空でないから文字𝑎0を一つ選び,˜𝑃𝑛を𝑎0を端数の引き受け手とする˜𝑃の丸め型(定義 11.3.4)とする.補題 11.3.5 より,どの𝑛 ≥1でも˜𝑃𝑛は長さ𝑛の型であり,どの文字でも˜𝑃𝑛(𝑎) →˜𝑃(𝑎)である.
型類の中の確率で誤り確率を下から抑える.命題 11.1.4 より,T𝑛(˜𝑃𝑛)のどの点でも𝑃𝑛({𝑥})は同じ値をとり,𝑄𝑛({𝑥})も同じ値をとる.したがってその小さいほうも𝑥に依らず,T𝑛(˜𝑃𝑛)にわたる和は要素数にその値を掛けたものである.要素数は非負だから,これは𝑃𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛))と𝑄𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛))の小さいほうに等しい.定義 11.5.1 の和のほかの項は非負だから
𝑃(𝑛)𝑒≥12min(𝑃𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)), 𝑄𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)))である.右辺は正だから,対数をとって−1/𝑛を掛けると,不等号の向きが変わって
−1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒≤log2𝑛+max(−1𝑛log𝑃𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)), −1𝑛log𝑄𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)))である(最小値の対数の符号を変えると,符号を変えた二つの対数の最大値になる).
˜𝑃𝑛は長さ𝑛の型で各文字で˜𝑃に収束するから,系 11.2.3 を,参照する分布として𝑃をとって当てると1𝑛log𝑃𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)) → −𝐷(˜𝑃 ‖ 𝑃)であり,𝑄をとって当てると1𝑛log𝑄𝑛(T𝑛(˜𝑃𝑛)) → −𝐷(˜𝑃 ‖ 𝑄)である.二つの極限はどちらも𝐶∗(𝑃,𝑄)に等しい.よってどの𝜀 >0についても,十分大きい𝑛では右辺の最大値の中の二つがともに𝐶∗(𝑃,𝑄) +𝜀未満であり,log2𝑛も𝜀未満である.したがって上極限は𝐶∗(𝑃,𝑄) +2𝜀以下であり,𝜀 >0は任意だから𝐶∗(𝑃,𝑄)以下である.◼
系 11.5.8 と 定理 11.5.13 を合わせると,最小値を与える𝜆∗が内点にとれるときには−1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒が𝐶∗(𝑃,𝑄)に収束する.命題 11.5.12 より,𝑃 ≠𝑄でありさえすればこの条件は満たされる.次の例では,具体的な分布について最小値を与える𝜆がただ一つであることまで確かめ,収束先の値を数で求める.
数値で見る
例 11.5.14(二値の Chernoff 情報). X ={0,1}とし,𝑃を𝑃(0) =0.1,𝑃(1) =0.9,𝑄を𝑄(0) =𝑄(1) =1/2で定まる分布とする.𝑃(𝑛)𝑒を 定義 11.5.1,Z,𝐶∗を 定義 11.5.3,𝑃𝜆を 定義 11.5.9 のとおりとすると,次の四つが成り立つ.
- どの実数𝜆についてもZ(𝜆) =2−𝜆(0.11−𝜆 +0.91−𝜆)である.
- logZの[0,1]上の最小値を与える𝜆はただ一つで,開区間(0,1)に属する.それを𝜆∗と書くと,𝑃𝜆∗(0)の値は約0.2675,𝜆∗の値は約0.5416である.
- 𝐶∗(𝑃,𝑄)の値は約0.1124ナットである.いっぽう𝐷(𝑃 ‖ 𝑄)の値は約0.3681ナット,𝐷(𝑄 ‖ 𝑃)の値は約0.5108ナットで,𝐶∗(𝑃,𝑄)はどちらよりも小さい(𝐷は 1.6 節の相対エントロピー).
- −1𝑛log𝑃(𝑛)𝑒 ⟶𝐶∗(𝑃,𝑄)(𝑛 →∞)である.
証明.
-
𝑄(𝑎) =1/2はどちらの文字でも同じだから𝑄(𝑎)𝜆 =𝑒−𝜆log2 =2−𝜆であり,これを 定義 11.5.3 の和からくくり出せばよい.
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命題 11.5.7 よりlogZは[0,1]で最小値をとる.それを与える𝜆を一つとる.𝑃 ≠𝑄だから 命題 11.5.12 よりこの𝜆は(0,1)に属し,命題 11.5.11 よりそこで微分係数は0である.その微分係数を書き下す.log𝑄(0)𝑃(0) =log5,log𝑄(1)𝑃(1) =log59だから,命題 11.5.11 の導関数の式より,𝜆での微分係数は𝑃𝜆(0)log5 +𝑃𝜆(1)log59である.𝑃𝜆(1) =1 −𝑃𝜆(0)とlog59 =log5 −log9を使うと,これは
log59+𝑃𝜆(0)log9に等しい.
微分係数が𝜆について狭義単調増加であることを見る.上の式とlog9 >0より,𝑃𝜆(0)が狭義単調増加であることを見れば足りる.𝑄(0) =𝑄(1)より
𝑃𝜆(1)𝑃𝜆(0)=𝑃(1)1−𝜆𝑄(1)𝜆𝑃(0)1−𝜆𝑄(0)𝜆=91−𝜆=𝑒(1−𝜆)log9であり,𝑃𝜆(0) +𝑃𝜆(1) =1だから𝑃𝜆(0) =1/(1 +91−𝜆)である.指数関数は狭義単調増加だから(logが狭義単調増加であることとlog𝑒𝑠 =𝑠から出る),91−𝜆は𝜆について狭義単調減少で,正の数の逆数をとると向きが変わるから𝑃𝜆(0)は狭義単調増加である.よって微分係数も狭義単調増加で,それが0になる𝜆は高々一つである.最小値を与える𝜆はすべて(0,1)に属して微分係数を0にするのだから,そのような𝜆はただ一つであり,これを𝜆∗と書く.
数値に移る.微分係数が𝜆∗で0になることは,上の式より𝑃𝜆∗(0)log9 =log9 −log5と同じだから
𝑃𝜆∗(0)=log9−log5log9=2.19722…−1.60943…2.19722…=0.26751…である.また𝑃𝜆∗(0) =1/(1 +91−𝜆∗)を𝜆∗について解くと91−𝜆∗ =0.73248…/0.26751… =2.73813…であり,対数をとって1 −𝜆∗ =1.00727…/2.19722… =0.45843…,すなわち𝜆∗ =0.54156…である.
- 命題 11.5.11 より𝐶∗(𝑃,𝑄) =𝐷(𝑃𝜆∗ ‖ 𝑄)であり,補題 11.2.5 より,これはlog2 −𝐻𝑏(𝑃𝜆∗(0))に等しい(𝐻𝑏は 例 1.1.2 の二値エントロピー関数).第2の主張の値を入れると𝐻𝑏(0.26751…) =0.58077…,log2 =0.69314…だから𝐶∗(𝑃,𝑄) =0.11237…である.次に 補題 11.2.5 より𝐷(𝑃 ‖ 𝑄) =log2 −𝐻𝑏(0.1) =0.69314… −0.32508… =0.36806…である.いっぽう 1.6 節の定義から
𝐷(𝑄‖𝑃)=12log0.50.1+12log0.50.9=12(log5+log59)=12(1.60943…−0.58778…)=0.51082…である.0.11237…はどちらよりも小さい.
- 𝑃と𝑄はどちらも全点で正だから 系 11.5.8 より下極限は𝐶∗(𝑃,𝑄)以上であり,第2の主張より𝜆∗は(0,1)に属するから 定理 11.5.13 より上極限は𝐶∗(𝑃,𝑄)以下である.よってこの数列は収束し,極限は𝐶∗(𝑃,𝑄)である.
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この𝑃は 例 11.2.6 と同じ偏ったコインである.例 11.5.14 の数を並べると,Bayes 誤り確率の指数0.1124は,第二種の誤りの指数を下から押さえた値𝐷(𝑃 ‖ 𝑄) =0.3681(系 11.4.7)より小さい.この例では,二つの誤りを同時に小さくすることを求めると,片方だけを見たときの速さは出ないということである.二つの立て方の間には,第一種の誤りにも指数を課すという中間の立て方がある.次節はそれを扱う.そこで現れる関数は,第一種の誤りに課す指数が0のとき𝐷(𝑃 ‖ 𝑄)をとり(命題 11.6.7),例 11.6.10 では𝐶∗(𝑃,𝑄)もその関数の値として現れる.
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