14.6 通信路のクラスと UV 外界
定理 14.5.8 は劣化を仮定していた.劣化は強い条件である.定義 14.5.4 が求めているのは二つの出力の同時分布についての等式で,受け手2の出力が受け手1の出力から作り直せることまで言っている.ところが通信の問題として本当に効くのは,二人がそれぞれ自分の出力から何を読めるか,すなわち出力の周辺だけである.定義 14.5.2 の誤り確率は,受け手𝑗の復号器が自分の出力𝑦𝑛𝑗だけを見て決まる量である.相手の出力について和をとってしまえば残るのは周辺通信路𝑊𝑗だから,符号の良し悪しを測る二つの量は𝑊1と𝑊2だけで決まり,同時分布は現れない.そこで本節では,周辺だけを見る条件を二つ置き,劣化がそのどちらも含意することを見る.
そのうえで,二人の性能を比べる条件を一切置かない外界を用意する.こちらは補助変数を二つ使い,五つ組の同時分布ひとつごとに四つの不等式が切る領域を作って,それを全部合わせた形に書かれる.本節の到達点は,三つのクラスでは容量領域がこの外界にちょうど一致する,という形にまとまる.
二つのクラス
定義 14.6.1(雑音がより少ない). 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1)とする.受け手1が受け手2より 雑音がより少ない(less noisy)とは,空でない有限アルファベットU,U上の分布𝑝𝑈,Uを入力・Xを出力とする通信路𝐾(第6章 定義 6.1.1)をどうとっても,同時分布が𝑝𝑈(𝑢) 𝐾(𝑥 ∣𝑢) 𝑊(𝑦1,𝑦2 ∣𝑥)である四つ組(𝑈,𝑋,𝑌1,𝑌2)について
𝐼(𝑈;𝑌2)≤𝐼(𝑈;𝑌1)が成り立つことをいう.
補助変数𝑈を入力の手前に置いて,そこから通信路に流し込む.そういう流し込み方をどう選んでも,𝑈について受け手1の側に届く情報が受け手2の側に届く情報を下回らない,というのが条件の中身である.𝑈を動かすので,これは入力分布を一つ動かすより強い要求になっている.いっぽう見ているのは𝐼(𝑈;𝑌1)と𝐼(𝑈;𝑌2)という周辺どうしの量で,二つの出力の同時分布は現れない.
定義 14.6.2(能力がより高い). 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1)とし,𝑊1,𝑊2をその周辺通信路とする.受け手1が受け手2より 能力がより高い(more capable)とは,X上のどの分布𝑝についても
𝐼(𝑝;𝑊2)≤𝐼(𝑝;𝑊1)が成り立つことをいう(𝐼(𝑝; ⋅)は第6章 定義 6.1.2 の通信路の相互情報量).
こちらは補助変数を挟まず,入力分布を直に動かすだけである.定義 14.6.1 で𝑈として入力そのものをとった場合にあたり,要求が弱い.名前のとおり,どの入力分布のもとでも受け手1のほうが多く運べる,という意味である.定義 6.1.4 の容量は𝐼(𝑝; ⋅)を入力分布について上限をとった値だから,この条件は容量の大小𝐶(𝑊2) ≤𝐶(𝑊1)を含んでいる.逆向き,すなわち容量どうしの比較から 定義 14.6.2 が出るかどうかは本書では扱わない.容量の比較は最大化した値を一つずつ比べるもので,同じ入力分布のもとでの比較にはなっていない.
証明. U,𝑝𝑈,𝐾をとり,四つ組(𝑈,𝑋,𝑌1,𝑌2)を 定義 14.6.1 のとおりとする.劣化の因子を𝑊2∣1と書く.
𝑌1を与えたとき𝑈と𝑌2が条件付き独立であることを示す.四つ組の同時分布は,劣化の等式より
𝑝(𝑢,𝑥,𝑦1,𝑦2)=𝑝𝑈(𝑢)𝐾(𝑥∣𝑢)𝑊1(𝑦1∣𝑥)𝑊2∣1(𝑦2∣𝑦1)である.𝑥について和をとると𝑝(𝑢,𝑦1,𝑦2) =𝑊2∣1(𝑦2 ∣𝑦1)∑𝑥𝑝𝑈(𝑢)𝐾(𝑥 ∣𝑢)𝑊1(𝑦1 ∣𝑥)であり,右辺の和は𝑝(𝑢,𝑦1)にほかならない.𝑝(𝑦1) >0である𝑦1を固定して両辺を𝑝(𝑦1)で割ると𝑝(𝑢,𝑦2 ∣𝑦1) =𝑊2∣1(𝑦2 ∣𝑦1) 𝑝(𝑢 ∣𝑦1)である.さらに𝑢について和をとると𝑝(𝑦2 ∣𝑦1) =𝑊2∣1(𝑦2 ∣𝑦1)だから
𝑝(𝑢,𝑦2∣𝑦1)=𝑝(𝑢∣𝑦1)𝑝(𝑦2∣𝑦1)であり,これが 定義 1.8.3 の条件である.すなわち𝑌2 →𝑌1 →𝑈はマルコフ連鎖をなす(定義 1.8.3 は両端について対称なので,同じことを𝑈 →𝑌1 →𝑌2とも書ける).
この連鎖にデータ処理不等式(定理 1.8.4)を当てると𝐼(𝑌2;𝑈) ≤𝐼(𝑌1;𝑈)である.命題 1.3.3 の対称性で向きをそろえれば主張を得る.◼
証明. X上の分布𝑝をとる.定義 14.6.1 を,U :=X,𝑝𝑈 :=𝑝,𝐾として入力をそのまま通す通信路(𝐾(𝑥′ ∣𝑢) =1が𝑥′ =𝑢のとき,それ以外で0)にとって当てる.この四つ組では𝑋 =𝑈が確率1で成り立つので,𝐼(𝑈;𝑌𝑗) =𝐼(𝑋;𝑌𝑗)である(𝑗 =1,2).いっぽう(𝑋,𝑌𝑗)の同時分布は𝑝(𝑥) 𝑊𝑗(𝑦𝑗 ∣𝑥)だから,命題 6.1.3 より𝐼(𝑋;𝑌𝑗) =𝐼(𝑝;𝑊𝑗)である.よって 定義 14.6.1 の不等式がそのまま𝐼(𝑝;𝑊2) ≤𝐼(𝑝;𝑊1)になる.◼
二つの含意を合わせると,例 14.5.5 の通信路は三つのクラスのどれにも入る.あの例で 定義 14.5.4 の意味の劣化を確かめてあるので,定理 14.6.3 と 定理 14.6.4 がそのまま当たる.0 <𝜌1 <1かつ0 <𝜌2 <1にとれば,𝑊(𝑦1,𝑦2 ∣𝑥)は正の数二つの積になって全点で正だから,全点で正であることまで求める主張にも当てられる.
二つの含意の逆向きが成り立つかどうかは,本書では扱わない.落ちるときに何を捨てているかは見ておける.劣化から雑音がより少ないへ落ちるところでは,同時分布についての条件を周辺どうしの比較に読み替えて,同時分布の情報を捨てている.雑音がより少ないから能力がより高いへ落ちるところでは,動かす対象を補助変数から入力そのものに狭めている.以下では三つの条件を,劣化がいちばん強く能力がより高いがいちばん弱いものとして扱う.次の命題は,真ん中の条件が重ね合わせ符号化にとって何をしてくれるかを述べたものである.
命題 14.6.5. 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1)とし,受け手1は受け手2より 定義 14.6.1 の意味で雑音がより少ないとする.空でない有限アルファベットU,U上の分布𝑝𝑈,Uを入力・Xを出力とする通信路𝐾をとり,四つ組(𝑈,𝑋,𝑌1,𝑌2)を 定義 14.6.1 のとおりとすると
𝐼(𝑋;𝑌1∣𝑈)+𝐼(𝑈;𝑌2)≤𝐼((𝑈,𝑋);𝑌1)である.
証明. 対(𝑈,𝑋)から𝑈を先に取り出すチェイン則(定理 1.5.1)で
𝐼((𝑈,𝑋);𝑌1)=𝐼(𝑈;𝑌1)+𝐼(𝑋;𝑌1∣𝑈)である.定義 14.6.1 より𝐼(𝑈;𝑌2) ≤𝐼(𝑈;𝑌1)だから,右辺の第1項をこれで下から置き換えれば主張を得る.◼
14.5 節で借りた 重ね合わせ符号化の達成可能性 は,一般の形では三本の枠𝑅1 <𝐼(𝑋;𝑌1 ∣𝑈),𝑅2 <𝐼(𝑈;𝑌2),max(𝑅1,0) +𝑅2 <𝐼((𝑈,𝑋);𝑌1)を課し,劣化していてレートがどちらも正の場合にかぎって三本目を落としてよい,という形をしていた.三本目が要るのは,受け手1が雲と衛星の両方を読むので,その二つを合わせた量を超えては読めないからである.命題 14.6.5 が言っているのは,雑音がより少ないかぎりこの三本目が最初の二本から自動的に従う,ということである.劣化した通信路で三本目を落とせるのは,定理 14.6.3 によりそこが雑音のより少ない場合に含まれているからである.
UV 外界
二人の性能を比べる条件を置かないまま外側から抑えたい.定理 14.5.8 の𝑈𝑖は受け手2のメッセージと過去の出力を束ねたものだったが,二人に優劣がないなら受け手1の側にも同じ役の補助変数を用意しなければならない.そこで補助変数を二つ使う.記号を一つ断っておく.次の定義の𝜈は五つ組の同時分布である.第8章 8.6 節は注水の水位を,第3章 3.1 節は力学系の測度を𝜈と書いているが,本節の𝜈はそのどちらとも別である.どれも引数をとらないので,章をまたいで読むときは気をつけたい.
定義 14.6.6(通信路の法と UV 外界). 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1)とする.可算集合U,Vに値をとる変数の対(𝑈,𝑉)を加えた五つ組(𝑈,𝑉,𝑋,𝑌1,𝑌2)の同時分布𝜈が𝑊の 通信路の法 であるとは,(𝑈,𝑉,𝑋)を与えたときの(𝑌1,𝑌2)の条件付き分布が𝑋だけで決まって𝑊( ⋅, ⋅ ∣𝑋)に等しいことをいう.通信路の法𝜈に対し,四つの不等式
𝑅1≤𝐼(𝑉;𝑌1),𝑅2≤𝐼(𝑈;𝑌2),𝑅1+𝑅2≤𝐼(𝑈;𝑌2)+𝐼(𝑋;𝑌1∣𝑈),𝑅1+𝑅2≤𝐼(𝑉;𝑌1)+𝐼(𝑋;𝑌2∣𝑉)をすべて満たす実数の対(𝑅1,𝑅2)の集合をUV(𝜈)と書く.通信路の法すべてにわたるUV(𝜈)の合併の閉包を𝑊の UV 外界 と呼び,O𝑈𝑉(𝑊)と書く.
補助アルファベットを可算にとったのは,外界をできるだけ広くとるためである.外界は広いほど主張として弱いので,合併を可算まで広げておけば抑えとしては安全側であり,そのぶん 系 14.6.7 の一致は強い主張になる.
条件が二つの補助変数について対称でないことに注意する.𝑈は受け手2の側の,𝑉は受け手1の側の粗い層で,最初の二本は 14.5 節の二つの枠をそれぞれの受け手について書いたものである.和レートの枠が二本あるのは,どちらの受け手を先に読むかで別の抑えが出るからで,二本とも課す.通信路の法という条件は落とせない.四つの情報量は五つ組の同時分布だけで決まって𝑊を名指していないので,条件を外すと合併の書き方から𝑊が一切消える.入力を出力にそのまま写す同時分布のように,𝑊を通さずに出力を作る同時分布まで入り込むからで,そうなると外界は二つの通信路を区別しない.
可算の補助変数を条件に置いたので,四つの情報量の読み方を断っておく.第1章の定義は有限アルファベットについてのものだから,四つの情報量はその定義をそのまま当てるのではなく,出力のエントロピーからの差の形(定理 1.3.4 と 定理 1.4.3 の表現を,出力の側を第1引数にとって読んだもの)で読む.𝑌1と𝑌2は有限アルファベットに値をとるので,条件の側に可算の変数を置いた条件付きエントロピーは,非負の項からなる可算個の和として 13.4 節の約束のとおりに定まる.各項は定理 1.1.5 によりlog|Y𝑗|以下の値に重みを掛けたものだから,和もlog|Y𝑗|以下で,差はつねに定まる.
道具を二つ借りる.どちらも 定義 14.5.3 の容量領域と 定義 14.6.6 の UV 外界を結ぶもので,向きが違う.
一つめは UV 外界は容量領域を含む,すなわち「達成できるレート対は四つの不等式を満たす法をもつ」という主張である.使う形を書いておく.
𝑊をブロードキャスト通信路とする(二人の性能を比べる条件も,全点で正であることも求めない).このときC(𝑊) ⊆O𝑈𝑉(𝑊)である.
当てる対象は 定義 14.5.3 の容量領域と 定義 14.6.6 の UV 外界だけで,依存するのは次に借りる 能力がより高い通信路の容量領域 の筋書きと,14.7 節の地の文である.
借りたままにするので,中で何が起きているかの筋書きだけ書いておく.骨格は 定理 14.5.8 のものを二つの補助変数に広げたものである.長さ𝑛の符号を一つとり,時刻𝑖ごとに𝑈𝑖 :=(Msg2,𝑌<𝑖2),𝑉𝑖 :=(Msg1,𝑌<𝑖1)とおく.受け手ごとの二本の枠は,定理 14.5.8 の受け手2の側の議論を,受け手1についても同じ形で行えば出る.和レートの二本は,二人ぶんのメッセージをまとめて抑えてから時刻ごとにほどくときに,どちらの補助変数を先に置くかで二通り出る.最後に時刻を一様に選ぶ変数を束ねて一文字あたりの形に直し,誤り確率を0に送る.
本書はこの主張を証明しない.劣化を使えないので 補題 14.5.7 の第3の主張にあたる評価が立たず,かわりに二つの和レートの枠を突き合わせる勘定が要るからである.
二つめは 能力がより高い通信路の容量領域,すなわち「能力がより高いなら外界がそのまま答えになる」という主張である.使う形を書いておく.
𝑊をブロードキャスト通信路とし,𝑊が全点で正,すなわち𝑊(𝑦1,𝑦2 ∣𝑥) >0がすべての𝑥,𝑦1,𝑦2で成り立つとする.受け手1が受け手2より 定義 14.6.2 の意味で能力がより高いなら
C(𝑊)=O𝑈𝑉(𝑊)である.
当てる対象は 定義 14.5.3 の容量領域と 定義 14.6.6 の UV 外界だけで,依存するのは 系 14.6.7 の証明と,その直後の地の文と,14.7 節の地の文である.
借りたままにするので,中で何が起きているかの筋書きだけ書いておく.⊆は一つめの借用 UV 外界は容量領域を含む そのものである.⊇を出すには,補助変数を二つ使う 定義 14.6.6 の点を,14.5 節で借りた 重ね合わせ符号化の達成可能性 が使う三本の枠𝑅1 <𝐼(𝑋;𝑌1 ∣𝑈),𝑅2 <𝐼(𝑈;𝑌2),max(𝑅1,0) +𝑅2 <𝐼((𝑈,𝑋);𝑌1)の内側へ移し,そこで届かせる(残すのは受け手2の側の𝑈で,消すのは𝑉のほうである).能力がより高いことが効くのは三本目の枠を出すところで,定義 14.6.6 の和レートの枠の右辺が,この仮定のもとで𝐼((𝑈,𝑋);𝑌1)以下に収まる.
14.5 節の借用を,劣化を仮定した形で引いてはいないことに注意する.引いているのは三本の枠を課した一般の形のほうである.劣化していない通信路で三本目を落とせるとは,本書は言えない.命題 14.6.5 が三本目を最初の二本から出してくれるのは雑音がより少ない場合までで,能力がより高いだけではそこまで言えないからである.
本書はこの主張を証明しない.𝑉を消したうえで 14.5 節の借用が使える形にそろえるには,可算の補助変数を有限のアルファベットへ切り詰める段と,補助変数の分布と𝐾を全点で正に直すために一様分布のほうへずらす段とが要り,最後にその二つの誤差を0に送る極限で戻すことになるからである.
系 14.6.7. 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1)とし,𝑊(𝑦1,𝑦2 ∣𝑥) >0がすべての𝑥 ∈X,𝑦1 ∈Y1,𝑦2 ∈Y2で成り立つとする.受け手1が受け手2より 定義 14.6.1 の意味で雑音がより少ないか,または𝑊が 定義 14.5.4 の意味で物理的に劣化しているなら
C(𝑊)=O𝑈𝑉(𝑊)である.
証明. 雑音がより少ない場合は,定理 14.6.4 より能力がより高いので,借りた 能力がより高い通信路の容量領域 がそのまま当たる.物理的に劣化している場合は,定理 14.6.3 より雑音がより少なく,いま示した場合に帰着する.◼
系 14.6.7 と,その手前で借りた 能力がより高い通信路の容量領域 を合わせると,全点で正な通信路については,三つのクラスで容量領域が決まったことになる.劣化・雑音がより少ない・能力がより高いの三つはこの順に弱くなるので,実際に内容があるのはいちばん弱い三つめで,前の二つはそこへの帰着である.どのクラスでも答えが同じO𝑈𝑉(𝑊)になる,つまり二人の受け手に優劣があるかぎり,優劣の付き方によらず同じ形の式が容量領域を与える.
外界が具体的にどんな集合になるかを,例 14.5.5 の通信路で一度書き下しておく.補助変数は,受け手2の側の𝑈に雲の層を,受け手1の側の𝑉に入力そのものをとる.𝑉は受け手1の側の粗い層だが,劣化した通信路で受け手1のほうが良い出力を見るのだから,粗くする理由がない.入力そのものにとると 定義 14.6.6 の第4の不等式の右辺の第2項が0になり,この例ではその一本が第3の不等式に吸収されて,残る三本だけで領域が書ける.
例 14.6.8(二段の二元対称通信路で外界の点をとる). 例 14.5.5 の通信路を𝑊と書き,𝜌1 =0.1,𝜌2 =0.2とする.𝑈を{0,1}上の一様分布に従う変数,𝐵を𝑈と独立でPr[𝐵 =1] =0.1を満たす{0,1}値の変数とし,𝑋 :=𝑈 ⊕𝐵,𝑉 :=𝑋とおいて,𝑌1 :=𝑋 ⊕𝑍1,𝑌2 :=𝑌1 ⊕𝑍2を 例 14.5.5 のとおり作る(𝑍1,𝑍2は互いに独立で(𝑈,𝐵)とも独立とする).このとき五つ組(𝑈,𝑉,𝑋,𝑌1,𝑌2)の同時分布𝜈は 定義 14.6.6 の意味の通信路の法であり,UV(𝜈)は三つの不等式
𝑅1≤1−𝐻𝑏(0.1),𝑅2≤1−𝐻𝑏(0.308),𝑅1+𝑅2≤𝐻𝑏(0.18)−𝐻𝑏(0.1)+1−𝐻𝑏(0.308)が切る領域である(𝐻𝑏は 例 1.1.2 の二値エントロピー).右辺の値はそれぞれおよそ0.531,0.109,0.320である.さらにUV(𝜈) ⊆C(𝑊)である.
証明. 通信路の法であることを見る.𝑉 =𝑋だから(𝑈,𝑉,𝑋)の値を与えれば𝑋の値が決まる.𝑌1と𝑌2は𝑋と(𝑍1,𝑍2)だけから作られ,(𝑍1,𝑍2)は(𝑈,𝐵)と独立だから,(𝑈,𝑉,𝑋)を与えたときの(𝑌1,𝑌2)の条件付き分布は𝑋だけで決まって 例 14.5.5 の𝑊( ⋅, ⋅ ∣𝑋)に等しい.これが 定義 14.6.6 の条件である.
四つの情報量を計算する.𝑈が一様で𝐵が𝑈と独立だから𝑋も一様であり,𝑌1と𝑌2も一様である.例 14.5.5 より𝑊1は反転確率0.1の,𝑊2は反転確率0.1 ⋅0.8 +0.9 ⋅0.2 =0.26の二元対称通信路である.
第1の量は𝐼(𝑉;𝑌1) =𝐼(𝑋;𝑌1)である.定理 1.3.4 と 命題 1.3.3 より𝐼(𝑋;𝑌1) =𝐻(𝑌1) −𝐻(𝑌1 ∣𝑋)であり,𝑌1が一様だから 定理 1.1.5 の等号条件より𝐻(𝑌1) =1,𝑋 =𝑥を与えると𝑌1が𝑥と違う確率は0.1だから 例 1.1.2 より𝐻(𝑌1 ∣𝑋) =𝐻𝑏(0.1)である.
第2の量は𝐼(𝑈;𝑌2) =𝐻(𝑌2) −𝐻(𝑌2 ∣𝑈)である.𝐻(𝑌2) =1である.𝑈 =𝑢を与えると𝑌2 =𝑢 ⊕𝐵 ⊕𝑍1 ⊕𝑍2で,𝐵と𝑍1の重なりが反転確率0.1 ⋅0.9 +0.9 ⋅0.1 =0.18,そこに𝑍2が重なって0.18 ⋅0.8 +0.82 ⋅0.2 =0.308である.よって𝐻(𝑌2 ∣𝑈) =𝐻𝑏(0.308)である.
第3の量は,定理 1.4.3 と 命題 1.4.2 より𝐼(𝑋;𝑌1 ∣𝑈) =𝐻(𝑌1 ∣𝑈) −𝐻(𝑌1 ∣𝑈,𝑋)である.𝑈 =𝑢を与えると𝑌1 =𝑢 ⊕𝐵 ⊕𝑍1で反転確率は0.18だから𝐻(𝑌1 ∣𝑈) =𝐻𝑏(0.18)であり,(𝑈,𝑋)を与えると𝑌1 =𝑋 ⊕𝑍1だから𝐻(𝑌1 ∣𝑈,𝑋) =𝐻𝑏(0.1)である.
第4の量は0である.定理 1.4.3 と 命題 1.4.2 より𝐼(𝑋;𝑌2 ∣𝑉) =𝐻(𝑌2 ∣𝑉) −𝐻(𝑌2 ∣𝑉,𝑋)であり,𝑉 =𝑋だから二つの項はどちらも𝐻(𝑌2 ∣𝑋)で,差は0である.
定義 14.6.6 の四つの不等式にこれらを入れる.第4の不等式の右辺は1 −𝐻𝑏(0.1)でおよそ0.531であり,第3の不等式の右辺のおよそ0.320以上だから,第3を課せば第4は自動的に満たされる.残る三本が主張の三本である.値は𝐻𝑏(0.1) =0.4689…,𝐻𝑏(0.18) =0.6800…,𝐻𝑏(0.308) =0.8908…から読める.
最後に包含を見る.𝑊(𝑦1,𝑦2 ∣𝑥)は,𝑌1が𝑥から反転確率0.1で,𝑌2が𝑌1から反転確率0.2で作られる確率の積だから,四つの組のどれでも正である.例 14.5.5 より𝑊は劣化しているから 系 14.6.7 が当たってC(𝑊) =O𝑈𝑉(𝑊)である.UV(𝜈)は 定義 14.6.6 の合併に含まれ,合併は自分の閉包に含まれるから,UV(𝜈) ⊆O𝑈𝑉(𝑊) =C(𝑊)である.◼
𝐵の反転確率を動かすと,二人の取り分が入れ替わる.1/2にとると𝑋が𝑈と独立になって𝐼(𝑈;𝑌2) =0,𝐼(𝑋;𝑌1 ∣𝑈) =𝐼(𝑋;𝑌1)になり,𝑅1の枠が受け手1の側の容量1 −𝐻𝑏(0.1) ≈0.531いっぱいまで伸びて𝑅2の枠が0に潰れる.0にとると𝑋 =𝑈で𝐼(𝑋;𝑌1 ∣𝑈) =0,𝐼(𝑈;𝑌2) =1 −𝐻𝑏(0.26) ≈0.173になり,今度は和の枠が0.173まで縮む.上の0.1はそのあいだの取り引きで,𝑅2に0.109を渡すかわりに和の枠が0.320に落ちている.雲の層を厚くするほど受け手2に回り,薄くするほど受け手1に回る.
協力外界
外界をもう一つ作る.こちらは補助変数を使わず,第6章の一人用の逆定理だけから出る.道具立てが軽いぶん抑えも粗いが,本書が自前で証明できる唯一の外界である.土台になる評価を先に切り出しておく.
補題 14.6.9. 𝐺を通信路(第6章 定義 6.1.1),𝑅を実数とする.任意の𝜁 >0に対してある𝑁 ≥1があって,𝑁 ≤𝑛を満たすすべての𝑛について,長さ𝑛のブロック通信路符号(定義 6.2.1)で1𝑛log𝑀 ≥𝑅かつ平均誤り確率が𝜁未満のものが存在するとする.このとき𝑅 ≤𝐶(𝐺)(定義 6.1.4)である.
証明. 𝑅 ≤0のときは 命題 6.1.6 より0 ≤𝐶(𝐺)だから主張が成り立つ.以下𝑅 >0とする.
𝜁 ∈(0,1)を一つとり,仮定の与える𝑁をとる.𝑁 ≤𝑛を満たす𝑛を一つ固定し,そこで得られる符号を(𝑀𝑛,𝑐𝑛,𝑑𝑛)と書く.メッセージが{1,…,𝑀𝑛}上の一様分布に従うとして議論する.これは符号に置く追加の仮定ではなく,評価のためにこちらが選ぶ分布である.このとき𝑃𝑛 :=Pr[𝑑𝑛(𝑌𝑛) ≠Msg]は平均誤り確率に等しく,𝑃𝑛 <𝜁である.1𝑛log𝑀𝑛 ≥𝑅 >0より𝑀𝑛 ≥2でもある.
定理 6.4.5 の仮定を確かめる.符号語𝑋𝑛 =𝑐𝑛(Msg)を通信路に通すのだから,𝑋𝑛を与えたときの𝑌𝑛の条件付き分布は∏𝑖𝐺(𝑦𝑖 ∣𝑥𝑖)であってMsgにはよらない.Msgによらないことが 定義 1.8.3 の条件付き独立そのものだからMsg →𝑋𝑛 →𝑌𝑛はマルコフ連鎖であり,積の形から 補題 6.4.6 より𝑋𝑛と𝑌𝑛は各時刻で記憶がなく(定義 6.4.4),𝑋𝑖の分布を𝑝𝑖と書けば対(𝑋𝑖,𝑌𝑖)の同時分布は𝑝𝑖(𝑥)𝐺(𝑦 ∣𝑥)である.よって 定理 6.4.5 より
log𝑀𝑛≤𝑛−1∑𝑖=0𝐼(𝑋𝑖;𝑌𝑖)+𝐻𝑏(𝑃𝑛)+𝑃𝑛log(𝑀𝑛−1)である.命題 6.1.3 より𝐼(𝑋𝑖;𝑌𝑖) =𝐼(𝑝𝑖;𝐺)であり,定義 6.1.4 の上限より𝐼(𝑝𝑖;𝐺) ≤𝐶(𝐺)だから,和は𝑛 𝐶(𝐺)以下である.例 1.1.2 より𝐻𝑏(𝑃𝑛) ≤log2 =1であり,𝑀𝑛 ≥2より0 ≤log(𝑀𝑛 −1) ≤log𝑀𝑛だから,𝑃𝑛 <𝜁と合わせて𝑃𝑛log(𝑀𝑛 −1) ≤𝜁log𝑀𝑛である.三つを入れて移項すると
(1−𝜁)log𝑀𝑛≤𝑛𝐶(𝐺)+1であり,𝑛で割り1𝑛log𝑀𝑛 ≥𝑅と1 −𝜁 >0を使うと(1 −𝜁)𝑅 ≤𝐶(𝐺) +1𝑛である.
これが𝑁 ≤𝑛を満たすすべての𝑛で成り立つので,𝑛 →∞として(1 −𝜁)𝑅 ≤𝐶(𝐺)を得る.𝜁は(0,1)の任意の数だったから,𝜁 →0として𝑅 ≤𝐶(𝐺)を得る.◻
命題 14.6.10(協力外界). 𝑊をブロードキャスト通信路(定義 14.5.1),𝑊1,𝑊2をその周辺通信路とし,Y1 ×Y2を一つの出力アルファベットとみなした𝑊を,第6章 定義 6.1.1 の意味の通信路として読む.𝐶を 定義 6.1.4 の通信路容量とし,
Ocoop(𝑊):={(𝑅1,𝑅2)∈ℝ2:𝑅1≤𝐶(𝑊1), 𝑅2≤𝐶(𝑊2), 𝑅1+𝑅2≤𝐶(𝑊)}とおく.このときC(𝑊) ⊆Ocoop(𝑊)である(C(𝑊)は 定義 14.5.3 の容量領域).
証明. まず,達成可能な対(定義 14.5.3)が三つの不等式を満たすことを示す.三つとも 補題 14.6.9 に帰着させる.そのために,ブロードキャスト符号から一人用のブロック通信路符号を三通りに作る.
受け手1の取り分は,相手のメッセージを一つ固定した符号に 補題 14.6.9 を当てて出る. 𝜁 >0をとり,定義 14.5.3 の与える𝑁をとる.𝑁 ≤𝑛を満たす𝑛を固定し,そこで得られる符号を(𝑀1,𝑀2,𝑐,𝑑1,𝑑2)と書く.𝑚2を一つ固定するごとに,符号化写像𝑚1 ↦𝑐(𝑚1,𝑚2)と復号器𝑑1の組は,𝑊1についての長さ𝑛のブロック通信路符号(定義 6.2.1)である.定義 14.5.1 の積の形で𝑦𝑛2について和をとると,𝑥𝑛を与えたときの𝑌𝑛1の条件付き分布が∏𝑖𝑊1( ⋅ ∣𝑥𝑖)になるからである.この符号の平均誤り確率は1𝑀1∑𝑚1𝑃𝑒,1(𝑚1,𝑚2)であり,これを𝑚2について一様に平均したものが 定義 14.5.2 の¯𝑃𝑒,1にほかならない.平均以下の値をとる項が少なくとも一つあるので,1𝑀1∑𝑚1𝑃𝑒,1(𝑚1,𝑚2) ≤¯𝑃𝑒,1 <𝜁を満たす𝑚2がとれる.メッセージ数は𝑀1でレートは1𝑛log𝑀1 ≥𝑅1だから,𝜁と𝑁の対応はそのまま 補題 14.6.9 の仮定になり,𝑅1 ≤𝐶(𝑊1)を得る.
受け手2の取り分は,添字を入れ替えた同じ論法で出る. 定義 14.5.1 の積の形で今度は𝑦𝑛1について和をとれば𝑊2が残り,あとは上と同じである.
二人の合計は,二人の出力を並べたものを一つの出力とみなした符号から出る. 𝜁 >0をとり,定義 14.5.3 を目標の誤り確率𝜁/2に対して使って𝑁をとる.𝑁 ≤𝑛を満たす𝑛を固定し,符号を(𝑀1,𝑀2,𝑐,𝑑1,𝑑2)とする.メッセージの対(𝑚1,𝑚2)を一つのメッセージとみなし,復号器を(𝑦𝑛1,𝑦𝑛2) ↦(𝑑1(𝑦𝑛1),𝑑2(𝑦𝑛2))とすると,この組はY1 ×Y2を出力とする𝑊についての長さ𝑛のブロック通信路符号であり,メッセージ数は𝑀1𝑀2である.対として当てそこなうのは少なくとも一方を当てそこなうときだから,(𝑚1,𝑚2)での誤り確率は𝑃𝑒,1(𝑚1,𝑚2) +𝑃𝑒,2(𝑚1,𝑚2)以下である.メッセージの対について平均すると,平均誤り確率は¯𝑃𝑒,1 +¯𝑃𝑒,2 <𝜁である.レートは1𝑛log(𝑀1𝑀2) =1𝑛log𝑀1 +1𝑛log𝑀2 ≥𝑅1 +𝑅2だから,補題 14.6.9 より𝑅1 +𝑅2 ≤𝐶(𝑊)を得る.
三つの不等式は,閉包に移しても保たれる. Ocoop(𝑊)は三つの半平面の共通部分である.半平面はどれも閉集合である.そこに属する対からなる収束列をとると,各不等式の両辺が極限に移って同じ不等式が成り立つので,14.2 節で借りた 平面の閉集合と閉包の基本性質 の第二により閉である.同じ基本性質の第一により,三つの共通部分も閉である.いま示したことから,達成可能な対全体はOcoop(𝑊)に含まれる.閉包はその集合を含む最小の閉集合だから(14.2 節の借用の第一),C(𝑊) ⊆Ocoop(𝑊)である.◼
同じ𝑊についてC(𝑊)と𝐶(𝑊)の二つが現れるが,前者は 定義 14.5.3 の容量領域という平面の部分集合,後者は 定義 6.1.4 の通信路容量という実数で,別の記号である.14.2 節 例 14.2.6 も同じ書き分けをしている.
三本目の読み方を確かめておく.Y1 ×Y2を一つの出力とみなすのは,二人の受け手が出力を持ち寄って協力し,二人ぶんのメッセージを一緒に言い当てる,という設定に相当する.協力してよいのだから,できることは増えるだけである.したがって協力した場合の限界𝐶(𝑊)は,協力しない場合の和レートの限界でもある.名前はこの読み方から来ている.
協力外界が具体的にどんな数になるかを,例 14.6.8 と同じ通信路で見ておく.
例 14.6.11(二段の二元対称通信路で協力外界を書き下す). 例 14.6.8 の通信路𝑊,すなわち 例 14.5.5 で𝜌1 =0.1,𝜌2 =0.2としたものをとる.このとき
𝐶(𝑊1)=1−𝐻𝑏(0.1),𝐶(𝑊2)=1−𝐻𝑏(0.26),𝐶(𝑊)=1−𝐻𝑏(0.1)である(𝐶は 定義 6.1.4 の通信路容量,𝐻𝑏は 例 1.1.2 の二値エントロピー).したがって 命題 14.6.10 のOcoop(𝑊)は,三つの不等式
𝑅1≤1−𝐻𝑏(0.1),𝑅2≤1−𝐻𝑏(0.26),𝑅1+𝑅2≤1−𝐻𝑏(0.1)が切る領域であり,右辺の値はそれぞれおよそ0.531,0.173,0.531である.
証明. 例 14.5.5 より𝑊1は反転確率0.1の,𝑊2は反転確率0.1 ⋅0.8 +0.9 ⋅0.2 =0.26の二元対称通信路だから,前の二つは 例 6.1.8 そのものである.
三つめに移る.X上の分布𝑝をとり,𝑋が𝑝に従い,𝑋を与えたときの(𝑌1,𝑌2)の条件付き分布が𝑊( ⋅, ⋅ ∣𝑋)であるような三つ組をとる.対(𝑌1,𝑌2)から𝑌1を先に取り出すチェイン則(定理 1.5.1)を当て,命題 1.3.3 の対称性で向きをそろえると
𝐼(𝑋;(𝑌1,𝑌2))=𝐼(𝑋;𝑌1)+𝐼(𝑌2;𝑋∣𝑌1)である.
第2項が0であることを示す.劣化の因子𝑊2∣1を 例 14.5.5 の証明のとおりにとる.𝜌1 =0.1だから𝑊1は全点で正であり,定義 14.5.4 の等式を𝑊1(𝑦1 ∣𝑥)で割ると,(𝑋,𝑌1) =(𝑥,𝑦1)を与えたときの𝑌2の条件付き分布は𝑊2∣1( ⋅ ∣𝑦1)である.右辺は𝑦1だけの関数だから,補題 14.5.6 を,𝐴に𝑌2,𝐵に対(𝑋,𝑌1),𝑔にその値から𝑌1の値を与える対応と読み替えて当てるとPr[𝑌2 =𝑦2 ∣𝑌1] =𝑊2∣1(𝑦2 ∣𝑌1)を得る.条件付き確率のチェイン則に二つを入れるとPr[𝑋 =𝑥, 𝑌2 =𝑦2 ∣𝑌1] =Pr[𝑋 =𝑥 ∣𝑌1] Pr[𝑌2 =𝑦2 ∣𝑌1]であり,これが 定義 1.8.3 の条件だから,命題 1.4.2 の等号条件より第2項は0である.
よって𝐼(𝑋;(𝑌1,𝑌2)) =𝐼(𝑋;𝑌1)である.命題 6.1.3 より左辺は𝐼(𝑝;𝑊),右辺は𝐼(𝑝;𝑊1)だから,𝑝を動かして 定義 6.1.4 の上限をとると𝐶(𝑊) =𝐶(𝑊1)を得る.値は𝐻𝑏(0.1) =0.4689…,𝐻𝑏(0.26) =0.8267…から読める.◼
例 14.6.8 の法が切る三本0.531,0.109,0.320と並べると,協力外界の効き目が見える.𝑅1の枠はどちらも0.531で同じ値である.𝑅2の枠の0.173は,上で𝐵の反転確率を0にとったときに 例 14.6.8 の法が与えた値と同じで,0.109より緩い.いちばん開くのは和の枠で,0.531に対して0.320である.協力外界は𝑅2を正にとっても和の枠を0.531のままにしているのに対し,例 14.6.8 の法は𝑅2に0.109を渡すかわりに和を0.320に切っている.二人の取り分のあいだの取り引きは協力外界には現れず,そこを言い当てるのは 定義 14.6.6 の合併のほうである.
本章はこれで,容量領域を二つの外界で抑えたことになる.借用の与えたO𝑈𝑉(𝑊)と,命題 14.6.10 の与えるOcoop(𝑊)である.本書はこの二つの大小を比べない.どちらも容量領域を含むことしか示しておらず,一方が他方に含まれることを述べる主張は本書にも形式化にもないからである.系 14.6.7 と,その手前の借用とが覆う三つのクラスでは前者が容量領域そのものなので,そこでは前者のほうが後者に含まれる.クラスの外でどうなるかは本書の範囲にない.
InformationTheory — 形式化検証つき情報理論教科書(レビュー版).数式は MathJax + AMS Euler で事前レンダリング.