15.2 対数最適ポートフォリオ

第5章 定理 5.2.1 は,倍加率を最大にする賭け金の配分が真の分布そのもの,すなわち比例賭けであることを示した.証明は短く,二つの倍加率の差をとるとオッズの項が引き算で消え,相対エントロピーが残る,というものだった.市場ではこの計算が動かない.資産倍率が個の項の和になったので,倍加率の差が相対エントロピーの形に落ちないからである.本書は市場について,最大を与えるポートフォリオを閉じた式では与えず,代わりに二つのことを示す.一つは倍加率がポートフォリオについて凹であること,もう一つは,最大を与えるポートフォリオが本の不等式で言い表せることである.

積が和に変わったために,第5章から消えるものもある.本章の市場にはオッズにあたる量がないので,公平なオッズ(定義 5.3.3)や胴元の取り分(命題 5.3.6)に対応する概念も出てこない.第5章 定理 5.3.1 の保存則,すなわち比例賭けの倍加率と勝ち馬のエントロピーの和がオッズと分布だけで決まる量になるという等式についても,本書は市場にあたるものを与えない.あの等式は,比例賭けのレースの倍率が分布の値とオッズの積であることを使い,その対数を二つに割ったところから出てくる.市場の資産倍率は積ではなく項の和である.

倍加率は凹である

定理 15.2.1(倍加率の凹性). とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布とする.𝑏0をポートフォリオ(定義 15.1.2),を満たす実数とし,𝑏𝜆(𝑗) :=(1 𝜆) 𝑏0(𝑗) +𝜆 𝑏1(𝑗)𝑗 =1,,𝑚)とおく.このときはポートフォリオであり,倍加率(定義 15.1.4)について

𝑊(𝑏𝜆,𝑝)(1𝜆)𝑊(𝑏0,𝑝)+𝜆𝑊(𝑏1,𝑝)

が成り立つ.

証明. まずがポートフォリオであることを見る.𝑏0(𝑗) 0だからであり,総和はである.

を一つ固定し,𝑠0 :=𝑚𝑗=1𝑏0(𝑗) 𝑥(𝑗)とおく.補題 15.1.5 よりどちらも正である.の資産倍率は

𝑚𝑗=1𝑏𝜆(𝑗)𝑥(𝑗)=(1𝜆)𝑠0+𝜆𝑠1

であり,正の二数の凸結合になっている.補題 1.1.6の狭義凹性を,この点に当てると

log((1𝜆)𝑠0+𝜆𝑠1)(1𝜆)log𝑠0+𝜆log𝑠1

を得る.両辺にを掛けてについて足せば,定義 15.1.4 より主張の不等式になる.

形式化: growthRate_concaveOn (ソース)

山が一つであること. 凹性が言っているのは,二つのポートフォリオを混ぜたものの倍加率が,混ぜる前の二つの倍加率を同じ重みで混ぜた値を下回らない,すなわち弦がグラフの下に来るということである.山が二つに割れることがないので,全体の最大がどこかを,その場で確かめられる条件だけで言い当てられる見込みが出てくる.凹関数では,どの向きに少し動かしても値が上がらない点が,そのまま全体の最大点になるからである.第5章では最大を与える配分が比例賭けだと分かっていたので,この見込みに頼る必要がなかった.市場では最大を与えるものを直に指す式がないので,代わりに,最大であることの目印を作ることになる.目印そのものは 定理 15.2.4定理 15.2.5 が与える.そこで並ぶ本の不等式は,銘柄の向きへ少し動かしても値が上がらない,という条件を通りの向きについて書き並べたものである.定理 15.2.5 の証明が実際にその向きへ動かしており,定理 15.2.4 は逆に,本がそろえば全体の最大であることを示す.ただし 定理 15.2.4 の証明が直に使うのは 補題 1.1.9 であって,倍加率の凹性そのものではない.凹性はここで,本の不等式という形の目印を探してよい,という見通しを与えている.

最大は達成される

Weierstrass の最大値定理を借りる. 借りるのは「有限次元の実ベクトル空間の空でない有界閉集合の上の実数値連続関数は最大値をとる」という形である.当てる対象は,実ベクトル空間の部分集合であるポートフォリオ全体の上の実数値関数で,直接当てるのは 命題 15.2.2 の証明と,後知恵の最良の資産が達成されることを見る 命題 15.8.5 の証明の二つだけである.本章のほかの主張は,この二つを経由してのみこの定理に依存する.第6章 6.1 節が通信路容量の達成(定理 6.1.5)のために,第9章 9.1 節がレート歪み関数の下限が最小値であること(命題 9.1.8)のために,第11章 11.5 節が Chernoff 情報の達成(命題 11.5.7)のために借りたのと同じ定理である.本書はこの最大値定理を証明しないが,形式化されていないわけではない.第6章 定理 6.1.5 の形式化が,Mathlib にある無条件の機械検証済みのこの定理をそのまま呼び出している.あわせて,微積分の計算規則(一次結合・商・合成・有限和が連続性を保つこと)を既知とする.

命題 15.2.2. とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布とする.このとき,どのポートフォリオ(定義 15.1.2についてもを満たすポートフォリオが存在する(定義 15.1.4 の倍加率である).

証明. ポートフォリオ全体は,からまでの番号に実数を割り当てる組の集合,すなわち実ベクトル空間の部分集合である.だから銘柄に全額を寄せた組が入っていて空ではなく,どのポートフォリオでもだから有界であり,定義 15.1.2 の条件が成分についての等式と不等式で書けているから閉である.

の連続性に移る.を固定すると,は成分の一次結合だから連続で,その値は 補題 15.1.5 より正である.の上で連続である.ではと書けるから(1.1 節の記号である),補題 1.1.8上の連続性と商の法則からそれが出る.合成が連続性を保つことからは連続で,非負の重みを掛けた有限和も連続だから,はポートフォリオ全体の上で連続である.

空でない有界閉集合の上の連続関数だから,借りた Weierstrass の最大値定理よりはそこで最大値をとる.それを与えるポートフォリオをとすればよい.

形式化上の注記. 命題 15.2.2 に対応する単独の宣言はない.単体の上で最大値をとることを結論にもつ宣言を結論の形で探すと三つ見つかるが,どれも目的関数か対象が違う.標本点ごとの最大を可測に選べることを述べた exists_measurable_argmax_on_stdSimplex (InformationTheory/Shannon/Portfolio/StationaryWinfty.lean) は,可測な選び方についての主張である.毎期同じ比率に配分し直すポートフォリオの中で後知恵で選んだ最良のものについて,その資産が達成されることを述べた bestConstantWealth_attained (InformationTheory/Shannon/Portfolio/Universal.lean) は,倍加率ではなく資産についての主張である.結論の字面がいちばん近いのは,第6章 定理 6.1.5 が紐付けている exists_capacity_achiever (InformationTheory/Shannon/ChannelCoding/ShannonTheorem.lean) で,単体の上で最大を与える点が存在することをそのままの形で述べているが,最大にしているのは倍加率ではなく相互情報量である.次の 定理 15.2.4定理 15.2.5 の紐付け先も,最大を与えるポートフォリオが与えられたときの特徴づけであって,存在そのものは述べていない.

定義 15.2.3(対数最適ポートフォリオ). とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布とする.どのポートフォリオ(定義 15.1.2についてもを満たすポートフォリオを,この市場の 対数最適ポートフォリオ と呼ぶ(定義 15.1.4 の倍加率である).命題 15.2.2 よりそのようなは存在する.本書はその一意性を述べないので,以下と書くときは,そのようなものを一つ選んだものとする.

一意にならない市場は実際にある.どの株価比のもとでも同じ倍率を返す銘柄が二つあれば,その二つへの配分をどう分け直しても資産倍率が変わらず,したがって倍加率も変わらないからである.

Kuhn–Tucker 条件

を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布,をポートフォリオ(定義 15.1.2)とする.ごとの

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)𝑚𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)1

という本の不等式を Kuhn–Tucker 条件 と呼ぶ.銘柄についての行の左辺は,銘柄に全額を寄せたときの資産倍率の資産倍率で割った比の,分布による平均である.すなわちこの行は,から銘柄に丸ごと乗り換えたときの期の資産の比が,平均としてを超えない,と言っている.

定理 15.2.4(Kuhn–Tucker 条件の十分性). とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布,をポートフォリオ(定義 15.1.2)とする.すべてのについて

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)𝑚𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)1

が成り立つならば,どのポートフォリオについてもである(定義 15.1.4 の倍加率である).すなわち定義 15.2.3 の対数最適ポートフォリオである.

証明. についてとおく.補題 15.1.5 よりどちらも正である.定義 15.1.4 より

𝑊(𝑏,𝑝)𝑊(𝑏,𝑝)=𝑥X𝑝(𝑥)(log𝑟(𝑥)log𝑠(𝑥))=𝑥X𝑝(𝑥)log𝑟(𝑥)𝑠(𝑥)

である.

補題 1.1.9 を,凹関数として補題 1.1.6 による),重みとして,点としてととって当てる.どのも正だからの定義域に入っており,重みは非負で総和がだから

𝑥X𝑝(𝑥)log𝑟(𝑥)𝑠(𝑥)log(𝑥X𝑝(𝑥)𝑟(𝑥)𝑠(𝑥))

を得る.

内側の和を並べ替える.を代入して和の順序を入れ替えると

𝑥X𝑝(𝑥)𝑟(𝑥)𝑠(𝑥)=𝑚𝑗=1𝑏(𝑗)𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)𝑠(𝑥)𝑚𝑗=1𝑏(𝑗)=1

である(不等号はと仮定の本の不等式による).いっぽうは分布だから正の値をとるがあり,どの項も非負だから,この和は正である.したがってこの和はより大きく以下であり,対数の単調性(補題 8.2.5)よりその対数は以下である.上の二つを合わせてを得る.

形式化: logOptimal_of_kuhnTucker (ソース)

行が本あることを読む. 行が本あるのは乗り換え先が通りあるからで,どの一つに丸ごと乗り換えても得をしないなら,どんな混ぜ方に乗り換えても得をしない,というのが 定理 15.2.4 の中身である.左辺が真にを下回る行もありうる.例 15.2.7 がその実物である.

逆向きも成り立つ.次の証明では,実数についてのときとなるという微積分の初等規則を既知とする.あわせて,有限個の項の和の極限が各項の極限の和であることと,極限が広義の不等号を保つことも既知とする.

定理 15.2.5(Kuhn–Tucker 条件の必要性). とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布とする.ポートフォリオ(定義 15.1.2が,どのポートフォリオについてもを満たすならば,すべてのについて

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)𝑚𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)1

である(定義 15.1.4 の倍加率である).

証明. を一つ固定する.銘柄に全額を寄せたポートフォリオ,すなわち番号を返しほかの番号にを返す関数は,成分が非負で総和がだからポートフォリオである.に対して,とこれとを重みで混ぜたものをと書く.すなわちであり,ではである.定理 15.2.1 よりもポートフォリオである.

を固定し,とおく.補題 15.1.5 よりである.の資産倍率は

𝑚𝑘=1𝑏𝜆(𝑘)𝑥(𝑘)=(1𝜆)𝑠(𝑥)+𝜆𝑥(𝑗)=𝑠(𝑥)(1+𝜆𝑢𝑥),𝑢𝑥:=𝑥(𝑗)𝑠(𝑥)1

である.左辺はポートフォリオの資産倍率だから正であり,とあわせてである.したがって 定義 15.1.4 より

𝑊(𝑏𝜆,𝑝)𝑊(𝑏,𝑝)=𝑥X𝑝(𝑥)log(1+𝜆𝑢𝑥)

となる.

の最適性からこの値は以下である.両辺をで割って

𝑥X𝑝(𝑥)log(1+𝜆𝑢𝑥)𝜆0

を得る.は有限だから,として借りた初等規則を各項に当てると,左辺はに収束する.極限は広義の不等号を保つのでであり,底はより大きいからで,である.の定義とを使えば,これは主張の不等式にほかならない.

形式化: kuhnTucker_of_logOptimal (ソース)

形式化上の注記. 宣言が求める正値性は,における資産倍率が正であることだけで,本文が 定義 15.1.1 で株価比そのものに課した正値性より弱い.本文の主張はその特別な場合である.

定理 15.2.4定理 15.2.5 を合わせると,ポートフォリオが 定義 15.2.3 の対数最適ポートフォリオであることと Kuhn–Tucker 条件を満たすこととは同じである.第5章で比例賭けという一つの式が担っていた役を,市場では本の不等式が担う.これは最適なポートフォリオを教える式ではなく,与えられたポートフォリオが最適かどうかを確かめる手続きである.次の二つの例では,その手続きが計算だけで済むことを見る.

では,確かめる相手はどこから来るのか.例 15.1.6 の市場は銘柄が二つなので,ポートフォリオは銘柄への配分ひとつで決まる.このは,第11章 11.4 節 の第二種の誤り確率とも,第3章 例 3.1.5 の二状態のマルコフ情報源の遷移確率とも別である.後者は 例 15.6.4 が本章に引き継ぐので,本章には二つの意味のが並ぶ.資産倍率は上向きで,下向きでである.倍加率はだから,補題 8.2.5 の単調性より,中身の

(1+𝛽)(1𝛽2)=12(𝛽12)2+98

の範囲で最大にするを探せばよく,それはである.次の例では,こうして見当をつけたが Kuhn–Tucker 条件を満たすことを確かめる.

例 15.2.6(現金と一つの株の対数最適ポートフォリオ). 例 15.1.6 の市場でとおくと,定義 15.2.3 の対数最適ポートフォリオであり,についてもについても

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)2𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)=1

である.

証明. 例 15.1.6 の計算より,の資産倍率はである.ではだから,左辺はである.ではだから,左辺はである.どちらも以下だから,定理 15.2.4 よりは対数最適ポートフォリオである.

例 15.2.7(買わない銘柄). 例 15.1.6 の市場に,株価比がつねにである銘柄を足す.すなわちとし,𝑥(1) =1𝑥(2) =2𝑥(3) =0.9𝑥(1) =1𝑥(2) =1/2とおいて,X ={𝑥,𝑥}とする.このとき定義 15.2.3 の対数最適ポートフォリオであり,

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)3𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)

の値はについてはについてはである.

証明. だから資産倍率は 例 15.1.6 と同じで,である.したがっての値は 例 15.2.6 の計算がそのまま使えて,どちらもである.ではだから,値はである.三つとも以下だから,定理 15.2.4 よりは対数最適ポートフォリオである.

銘柄は,どの期にも資産をきっかり倍にする.例 15.2.7 の対数最適ポートフォリオはこれを買わない.例 15.2.6 では買っている二つの銘柄の行がどちらも等号になり,例 15.2.7 では,買っている二つの銘柄の行が等号で,買っていない銘柄の行だけがを下回っている.どちらの例でも Kuhn–Tucker 条件を確かめるのに要ったのは,資産倍率を二つの株価比について計算して割り算をすることだけである.最大化の問題を解かずに最適だと言い切れる,これが 定理 15.2.4 の使い道である.ただしこの二つでは,確かめる相手を用意するほうも放物線の頂点を探すだけで済んでいた.頂点を探す手が当たらない市場では,確かめる手続きのほうだけが残る.節の終わりの 例 15.2.9 がそれである.

買っている銘柄の行に等号が立ったのは,どちらの例でも偶然ではない.

系 15.2.8(持っている銘柄での等号). とし,を株価比(定義 15.1.1)からなる空でない有限集合,上の分布,をポートフォリオ(定義 15.1.2)とする.すべてのについて

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)𝑚𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)1

が成り立つならば,を満たすどのについても,この不等式は等号で成り立つ.

証明. についてとおく.補題 15.1.5 よりである.銘柄の行の左辺をと書く.を掛けてについて足し,和の順序を入れ替えると

𝑚𝑗=1𝑏(𝑗)𝑐𝑗=𝑥X𝑝(𝑥)𝑚𝑗=1𝑏(𝑗)𝑥(𝑗)𝑠(𝑥)=𝑥X𝑝(𝑥)=1

である(第の等号はによる).定義 15.1.2 よりだから,これは

𝑚𝑗=1𝑏(𝑗)(1𝑐𝑗)=0

と書き直せる.仮定よりであり,だから各項は非負である.非負の有限個の項の和がになるのは,どの項ものときに限る.よってならである.

形式化上の注記. 系 15.2.8 に対応する単独の宣言はない.Kuhn–Tucker 条件の左辺が等号でに等しいことを結論にもつ宣言を結論の形で探して見つからなかった.機械検証が及ぶのは 定理 15.2.4定理 15.2.5 の不等号の向きまでである.

これで Kuhn–Tucker 条件は,本のばらばらな検査ではなく一枚の絵になる.行の左辺を,その銘柄に丸ごと乗り換えたときの期の資産の比の平均と読めば,持っている銘柄の値はどれもちょうど,すなわち互いに等しく,持っていない銘柄の値はそれ以下だということである.最適なポートフォリオは,配分している銘柄のあいだで乗り換えの得失を釣り合わせている.

見当のつけ方のほうに戻る.例 15.2.6 で頂点が探せたのは,二つの株価比の確率が等しく,倍加率がと,対数の中の放物線一つに畳めたからである.確率が偏るとこの畳み方はできない.上向きの確率をにすると倍加率はとなり,対数の中は次の多項式で,頂点という言い方が当たらない.代わりに,上向きが回に回なのだから全額を株に寄せてみよう,と見当をつけて,Kuhn–Tucker 条件で確かめる.

例 15.2.9(端に寄る対数最適ポートフォリオ). 例 15.1.6 の二つの株価比をとり,分布だけを取り替える.すなわちX ={𝑥,𝑥}𝑥(1) =𝑥(1) =1𝑥(2) =2とし,𝑝(𝑥) =9/10とする.このとき全額を銘柄に寄せたポートフォリオ,すなわち定義 15.2.3 の対数最適ポートフォリオであり,

𝑥X𝑝(𝑥)𝑥(𝑗)2𝑘=1𝑏(𝑘)𝑥(𝑘)

の値はについてについてである.その倍加率(定義 15.1.4)はである.

証明. の資産倍率は,である.ではだから,値はである.ではである.どちらも以下だから,定理 15.2.4 よりは対数最適ポートフォリオである.倍加率は 定義 15.1.4 よりである.

例 15.2.9 の対数最適ポートフォリオは現金をまったく持たない.銘柄への配分をからまで動かしたときの最大が,動かせる範囲の端で起きているということである.例 15.2.6は範囲の内側にあって,そこでは二つの行がどちらも等号だった.ここで買っている銘柄は一つだけなので,系 15.2.8 が等号を要求するのもその一行だけで,現金の行はにとどまる.現金に丸ごと乗り換えたときの期の資産の比は平均してである,というのがこの一行の意味である.

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